トークンとは?

AI

ChatGPTのような生成AIにおける「トークン」は、多くの人が直感的に考える「単語数」や「文字数」、あるいは「ファイルサイズ」とは少し異なる、AIが言語を処理するための独自の基本単位を指します。

結論から言うと、トークンは「AIが文章を意味のある最小単位に分割したもの」です。そして、この分割のされ方が言語によって大きく異なります。

1. トークンとは何か?

AIは人間のように「単語」や「文字」をそのまま理解しているわけではありません。AIは、与えられた膨大なテキストデータを統計的に学習し、「意味の塊」として最も効率的に扱える単位に文章を分割します。この分割された一つひとつのパーツが「トークン」です。

トークンには以下のようなものがあります。

  • 単語そのもの: the, is, apple のような頻出する短い単語。
  • 単語の一部(サブワード): Tokenization という単語は Tokenization のように分割されることがあります。
  • 文字: A, B, C や、日本語の , , など。
  • 句読点や記号: , . ! など。
  • スペース: 単語の先頭のスペース is のように、スペースを含めて1トークンと見なされることもあります。

身近な例え:

レゴブロックを想像してください。文章全体が大きな作品だとすると、トークンは様々な形や大きさの「ブロック」です。AIは、この無数のブロック(トークン)の組み合わせ方や繋がり方を学習し、文章を生成したり解釈したりしています。

2. 具体例で示す英語と日本語での違い

このトークンという概念が特に重要になるのが、言語による違いです。

英語の場合

英語は単語がスペースで区切られているため、比較的「1単語≒1トークン」に近くなります。

例文: ChatGPT is a powerful AI.

この文章は、おおよそ以下のようにトークン化されます。

[Chat][GPT][ is][ a][ powerful][ AI][.] -> 7トークン

経験則: 英語では、およそ100トークンで75単語程度と言われています。

日本語の場合(ここが重要)

日本語は、スペースで単語が区切られておらず、ひらがな・カタカナ・漢字が混在するため、トークン化が非常に複雑になります。多くの場合、文字単位や短い単語単位で細かく分割されます。

例文: 「AIはトークンという単位で文章を処理します。」

この文章は、モデルにもよりますが、おおよそ以下のようにトークン化される可能性があります。

[AI][は][トークン][という][単位][で][文章][を][処][理][します][。] -> 12トークン

場合によっては、さらに細かく分割されます。

[AI][は][ト][ー][クン][と][いう][単][位][で][文][章][を][処][理][し][ます][。] -> 17トークン

経験則:

  • ひらがな・カタカナ: おおよそ1文字が1〜2トークン
  • よく使われる漢字: 1文字が1〜2トークン
  • あまり使われない難しい漢字: 1文字が2〜3トークン以上になることも

この結果、同じ意味の内容でも、日本語は英語に比べてトークン数が1.5倍から3倍近く多くなる傾向があります。

言語別トークン効率比較(英語基準1.0)

言語トークン効率例(同じ意味の文)
英語1.0דThe cat is cute”(4トークン)
日本語(漢字)2.0~3.0×「猫はかわいい」(4トークン)
日本語(ひらがな)2.5~3.5×「ねこはかわいい」(5トークン)

3. なぜトークンという単位を使うのか?

AIが文字や単語ではなく、トークンという単位を使うのには、以下のようなメリットがあるからです。

  1. 語彙数の効率化: 世の中にあるすべての単語を辞書に登録するのは非効率です。トークン(特にサブワード)を使うことで、限られた数のブロックの組み合わせで、無限に近い単語や表現に対応できます。
  2. 未知語への対応: decentralization のような複雑な単語や、新語・造語が出てきても、AIは de central ization のように知っているトークンに分解して意味を類推できます。
  3. 文法構造の学習: -ing-tion のような接尾辞、un-re- のような接頭辞をトークンとして学習することで、AIは文法的な構造も効率的に捉えることができます。

4. トークン数が重要になる場面

トークンを理解することがなぜ重要かというと、AIサービスの料金や性能限界に直結するからです。

  1. APIの利用料金: OpenAIやGoogleなどのAIサービスをAPI経由で利用する場合、料金は**「使用したトークン数」**に基づいて計算されます。入力(プロンプト)と出力(AIの応答)の両方がカウントされるため、日本語のようにトークン効率が悪い言語は、英語に比べて利用料金が割高になります。
  2. コンテキストウィンドウ(Context Window): 各AIモデルには、一度に処理できるトークンの最大量(コンテキストウィンドウ)が定められています。例えば「最大4096トークン」というモデルでは、入力と出力を合わせて4096トークンまでしか扱えません。これを超えると、古い情報を忘れたり、エラーになったりします。長文の要約や複雑な対話を行う際には、この上限を意識する必要があります。
  3. 処理効率:
    トークン数が多いほど応答時間が延び、リアルタイム性が低下。

5. ファイルサイズとの関係

トークンはテキスト内容に依存し、ファイルサイズとは直接リンクしません:

  • 非テキストファイル(画像/音声):
    画像は解像度に応じて85~8,000トークン、音声は1分あたり150~200トークンに換算されます。
  • PDF/ドキュメント: テキスト部分のみがトークン化され、画像や書式は無視されるか別途換算。

: 1,000文字の日本語記事 → 約1,000トークン(GPT-4)、同じ内容の英語なら300~400トークン。

6. トークン管理の実践ツール

正確なトークン数を把握するための代表的なツール:

  • OpenAI Tokenizer: GPTシリーズ向けの公式カウンター。
  • Anthropic Token Counter: Claude専用のカウンター。
  • LLM Token Calculator: 複数モデルの料金を比較。
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まとめ

トークンは「ファイルサイズ」ではなく、AIがテキストを分解・理解するための最小単位です。日本語は英語よりトークン数が増えやすく、コストや処理効率に直結するため、プロンプト設計時には特に注意が必要です。効率的な利用には、対象モデルのトークナイザー特性を理解し、ツールを活用した事前見積もりが不可欠です。

  • トークンとは、AIが言語を処理するための基本単位であり、単語や文字そのものではない。
  • 文章を意味のある最小単位に分割したもので、単語、単語の一部、文字、記号などが含まれる。
  • 日本語は英語に比べて、同じ内容でもトークン数が多くなる傾向があり、料金や性能限界の点で不利になる。
  • トークン数は、生成AIサービスの料金体系や性能限界を理解する上で非常に重要な概念です。

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