それぞれの思想と特徴を簡潔にまとめます。
手法 | 提唱者 | 主な目的・思想 | 特徴 |
鈴木式 | 九州大学 鈴木優准教授 | 再現性の確保と標準化。 初心者でも迷わず、安定して質の高い出力を得るための「型」。 | #役割 #指示 #制約条件 など、ハッシュタグ(# )で見出しを付けた明確な構造。テンプレート化が容易。 |
深津式 | note株式会社 深津貴之 氏 | 意図の正確な伝達。 AIに何をすべきかを過不足なく伝え、期待通りの出力を引き出すための汎用的な基本構造。 | #命令書 #制約条件 といったシンプルな構造が基本。役割定義やステップ実行など、様々なテクニックと組み合わせやすい柔軟性を持つ。 |
七里式 | REVISIO株式会社 七里信一 氏 | 思考プロセスの設計。 AIに単に答えを出させるのではなく、「どう考えるか」という思考の過程を細かく指示することで、質の高い洞察や創造的な成果物を得る。 | 思考の制約条件 思考のプロセス 思考の深掘り など、AIの思考自体をコントロールしようとする詳細な設計。プロンプト自体が長大になる傾向。 |
それぞれの違いを「使いやすさ」「適したタスク」「出力の傾向」という観点から比較し、メリット・デメリットをまとめます。
1. 鈴木式プロンプト
深津式・七里式との違い:
最も「型」が明確で、初心者にとっての使いやすさを重視しています。深津式よりも構造がやや詳細で、七里式のように思考プロセスまで踏み込まず、出力までの指示が簡潔です。「誰でも書ける設計図」のようなイメージです。
- メリット:
- 初心者でも簡単: テンプレートを穴埋めする感覚で使えるため、誰でもすぐに実践できます。
- 再現性が高い: 指示が構造化されているため、AIの解釈がブレにくく、安定した品質の出力が得られやすいです。
- 共有しやすい: チーム内でプロンプトの型を共有・標準化するのに非常に適しています。
- デメリット:
- 柔軟性に欠ける場合がある: 型が決まっているため、非常に独創的・複雑なタスクに対しては、指示が窮屈に感じられることがあります。
- 深い思考は不得意: AIに「考えさせる」ことよりも「答えさせる」ことに特化しているため、七里式ほど深い洞察を引き出すのは難しい場合があります。
2. 深津式プロンプト
鈴木式・七里式との違い:
3つの中で最もシンプルかつ汎用的な「基本形」と言えます。鈴木式ほど厳密なテンプレートではなく、七里式ほど複雑でもないため、様々な場面で応用が利きます。「シンプルな基本のレシピ」のようなイメージです。
- メリット:
- 汎用性が非常に高い: シンプルなため、どんなタスクにも基本の型として応用できます。
- 覚えやすい: 基本構造が簡単なため、すぐに覚えて使うことができます。
- 拡張性が高い: 役割設定やステップ・バイ・ステップ指示など、他の高度なテクニックと組み合わせるベースとして最適です。
- デメリット:
- 使い手の手腕が問われる: シンプルな分、制約条件や命令の書き方次第で出力の質が大きく変わります。ある程度の慣れや工夫が必要です。
- 指示が曖昧だとブレやすい: 構造が緩やかなため、指示が曖昧だとAIが意図を汲み取れず、期待外れの回答が返ってくることがあります。
3. 七里式プロンプト
鈴木式・深津式との違い:
AIに「何をするか(What)」だけでなく「どのように考えるか(How)」を徹底的に指示する点が最大の違いです。出力そのものよりも、そこに至るまでの思考プロセスを設計することに主眼を置いています。「AIをコンサルタントとして教育する育成プラン」のようなイメージです。
- メリット:
- 非常に質の高い出力: AIに深く思考させるため、表面的でない、創造的で深い洞察に満ちた回答を引き出せます。
- 複雑なタスクに最適: 戦略立案、市場分析、新規事業のアイデア出しなど、答えが一つではない複雑な課題で圧倒的な力を発揮します。
- 自分の思考整理にもなる: プロンプトを作成する過程で、自分自身の思考も整理されます。
- デメリット:
- プロンプト作成が非常に難しい: 思考プロセスを言語化する必要があるため、作成に時間と高度なスキルが求められ、初心者にはハードルが高いです。
- 手間がかかる: 要約やメール作成といった簡単なタスクにはオーバースペックで、作成の手間が見合いません。
- 文字数制限に達しやすい: プロンプトが非常に長くなるため、AIの入力文字数制限に達してしまうことがあります。
まとめ:どのプロンプトをどう使うか?
これらの手法に優劣はなく、タスクの目的や複雑さに応じて使い分けるのが最も賢い使い方です。
- 日常的な定型業務(要約、メール作成、翻訳など)
→ 鈴木式 で安定した品質を素早く得る。 - 様々なタスクに柔軟に対応したい、基本を覚えたい
→ 深津式 をベースに、必要に応じて他のテクニックを組み合わせる。 - 重要な企画、戦略立案、深い分析など、AIの能力を極限まで引き出したい
→ 七里式 を用いて、AIに高品質な思考をさせて最高の答えを導き出す。
このように、それぞれの特性を理解し、自分の目的やスキルレベルに合わせて使い分けることで、生成AIをより強力なパートナーとして活用することができるでしょう。
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