金価格の未来を読み解く

雑学

金価格が上昇しても、採掘量が即座に増えるわけではありません。金鉱山の新規開発には10~20年もの期間が必要で、近年は新たな大型鉱山、特に超大型鉱山「ティア1」の発見が激減しています。これは、供給がコスト面で非効率化し、掘っても金が増えない時代に突入していることを示しています。

金価格の真の動向を読み解く鍵は、この「地上在庫」にあります。2024年末時点で約21万6,265トンに上る地上在庫は、人類がこれまでに採掘した金のほぼ全量であり、その99%以上が流通しています。宝飾品、投資用、中央銀行保有と分かれますが、金市場の価格形成に最も影響を与えるのは、毎年わずかに追加される鉱山生産量ではなく、この巨大な既存在庫の売買や保有方針なのです。特に金ETFを通じて一般投資家が地上在庫を動かせるようになり、金相場は「掘れる量」よりも「売られる意思」に左右される時代へと変化しています。

金鉱山の現実と生産量の限界

金価格が上昇すれば採掘量が増えるという考え方は短絡的です。金鉱山の新規開発には、実に10年から20年もの長い期間を要するため、短期的な価格変動には追いつけません。実際、2008年以降の生産量増加は、それ以前に計画された案件の結果に過ぎません。近年では、新たな大型鉱山の発見が激減しており、特に「ティア1」と呼ばれる超大型鉱山に至っては、2010年以降ほぼ発見されていません。発見の成功率も0.5%未満と極めて低く、見つかる金は限られています。供給地域は分散しましたが、これは供給リスクの分散であり、生産効率や供給量の改善にはつながっていません。むしろ採掘コストが増加し、掘っても生産量が増えない時代に突入しているのが実情です。

金価格を左右する「地上在庫」の力

2024年末時点での金の地上在庫は、約21万6,265トンに達し、これは人類がこれまでに採掘した金ほぼ全てに匹敵します。その99%以上が現在も形を変えて流通しているのが、金という金属の特異性です。この地上在庫の内訳は、宝飾品が約45%(10万トン)、投資用が5万トン、中央銀行の保有が約3万トンとなっています。金市場の価格形成に最も影響を与えるのは、毎年わずかに追加される鉱山生産量よりも、すでに存在するこの巨大な地上在庫の売買や保有方針です。特に、金ETFなどの金融商品を通じて一般投資家がこの地上在庫を動かせるようになったことで、マーケットの感覚は「掘れる量」ではなく「売られる意思」に左右される時代へと変化しています。

金採掘の経済的ジレンマと市場の未来

2020年末時点での金の埋蔵量(現状の価格と技術で採掘可能な量)は約5万トンとされています。これに対し、総資源量(コストや技術面で採算が取れないものを含む)は約13万2,000トンです。

新たな金鉱山開発には、多額の初期投資(数百億円規模)と高い損益分岐点が必要であり、価格が下がればすぐに赤字に転落します。技術の進歩はありますが、それだけでは採算性の改善には限界があります。この結果、「価格が上がらなければ掘れない、しかし掘れば価格が下がる」という、経済理論で「後方屈折的供給曲線」として示される供給サイクルのジレンマが発生しています。もはや金相場は、鉱山からの供給よりも、既存の地上在庫を動かすマーケットの動きに大きく左右される時代に突入していると言えるでしょう。

まとめ

金価格が上昇したとしても、金鉱山からの採掘量が即座に増えるわけではありません。金鉱山の新規開発には10年から20年もの長い期間が必要とされ、近年は新たな大型鉱山、特に「ティア1」と呼ばれる超大型鉱山の発見が激減しています。この状況は、金の供給がコスト面で非効率化し、たとえ掘り進めても金の増量が望めない時代に突入していることを示唆しています

金価格の真の動向を読み解く鍵は、地中に埋蔵されている金ではなく、すでに採掘され地上に存在する「地上在庫」にあるとされています。2024年末時点で約21万6,265トンに上るこの地上在庫は、人類がこれまでに採掘した金のほぼ全量に相当し、その99%以上が宝飾品、投資用、中央銀行の保有といった形で流通しています。金市場の価格形成に最も大きな影響を与えるのは、毎年わずかに追加される鉱山生産量(年間約3,000トン)ではなく、この巨大な既存の地上在庫における売買の意思や、各国中央銀行、機関投資家、そして個人投資家の保有方針なのです

特に、金ETF(上場投資信託)の普及は、この市場構造に大きな変化をもたらしました。一般投資家が金ETFを通じて、比較的容易に地上在庫の売買に影響を与えられるようになったことで、金相場はもはや「どれだけ掘れるか」という供給能力よりも、「どれだけ売られる意思があるか、あるいは保有し続けられるか」という市場参加者の心理と行動に左右される時代へと変化しているのです

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