お寺の正式名称は、複数の「号」と本体の名前である「寺号」で構成されており、その並び順には一定の決まりがあります。
お寺の名前が「〇〇山△△院□□寺」のように長いのはなぜ?実はこれには明確なルールがあります。山での修行に由来する**「山号」、建立者の格式を示す「院号」、そして本体名である「寺号」**の3部構成が基本。この法則を知れば、お寺の歴史や格が一瞬でわかり、京都や奈良への旅行が何倍も知的で楽しくなります。
正式名称の構成要素と順序
最も正式な名称は、以下の順序で構成されるのが基本です。宗旨・宗派は、お寺の所属を示すものであり、名称そのものには含まれません。
【基本の順序】
山号 (さんごう) → 院号 (いんごう)・庵号 (あんごう)・堂号 (どうごう)など → 寺号 (じごう)
各要素を分かりやすく例えるなら、山号は「名字」、**寺号は「名前」**と考えると良いでしょう。「院号」などは、ミドルネームや格式を示す称号にあたります。
- ① 山号 (さんごう)
寺院が元々山中に建てられることが多かったため、その山の名を冠する習慣に由来します。多くの場合、正式名称の最初に置かれます。
例: 比叡山 延暦寺 (ひえいざん えんりゃくじ) - ② 院号 (いんごう)・庵号 (あんごう)・堂号 (どうごう)
天皇や上皇、有力な公家や武家が建立に関わった証しや、寺院内の特定の建物(塔頭(たっちゅう))に由来する名称です。すべての寺院にあるわけではなく、格式の高さを示す要素でもあります。
例: 東福寺 龍吟庵 (とうふくじ りょうぎんあん) ←庵号
例: 高野山 金剛峯寺 (こうやさん こんごうぶじ) ←寺号自体が「峯」を持つ特殊な例 - ③ 寺号 (じごう)
寺院本体の名前であり、最後に置かれます。「〇〇寺」「〇〇院」のように、「寺」や「院」といった部分まで含めて寺号となります。- ~寺 (じ、てら、でら): 最も一般的な寺院の名称。
- ~院 (いん): 元は上皇や女院の住まいを指し、皇室や貴族ゆかりの格式高い寺院に多く見られます。(例: 知恩院、平等院)
- ~庵 (あん): 僧侶が隠棲するような、比較的小さな草庵に由来します。
- ~堂 (どう): 特定の仏様を祀るお堂が、そのまま寺院名になったものです。(例: 六角堂、三十三間堂)
宗旨・宗派の位置づけ
宗旨・宗派(例: 浄土宗、真言宗豊山派)は、その寺院が属する宗団(グループ)の名称です。寺名の一部ではないため、通常は名称の前後に別項目として記載されます。
【正式表記の例】
- 宗旨宗派: 浄土宗
- 寺院名称: 紫雲山 金戒光明寺 (しうんざん こんかいこうみょうじ)
→ この場合、「浄土宗」は名称の前または後ろに別枠で記載します。
よくある表記パターン
- 最も一般的な形: 山号 + 寺号
例: 比叡山 延暦寺 (ひえいざん えんりゃくじ) - 山号がない寺院、特に都市部や平地に建てられた寺院、あるいは特定の宗派の本山などには山号がない場合があります。
例: 東本願寺、浅草寺、本能寺 - 通称名が広く使われる例とし正式名称が長い、あるいは複数ある場合、通称が一般的に使われることが多々あります。
- 正式名称: 瑞龍山 長岡山 音羽院 清水寺 (ずいりゅうざん ながおかさん おとわいん きよみずでら)
- 通称: 清水寺 (きよみずでら)
【まとめ】
| 分類 | 内容 | 例 |
| 所属 | 宗旨・宗派(寺名には含まれない) | 浄土宗、臨済宗妙心寺派 |
| 正式名称 | 山号 → (院号など) → 寺号 の順 | 紫雲山 金戒光明寺 |
| 通称 | 寺号のみや、広く知られた名称 | 金戒光明寺、清水寺 |
このように、正しい並び順は「山号 → (院号/庵号/堂号) → 寺号」です。実際には、すべての要素を省略せずに記載する機会は少なく、「山号 + 寺号」または「寺号」のみで呼ばれることがほとんどです。
正確な名称が必要な場合は、各寺院の公式ウェブサイトや、宗教法人の登記などを参照するのが最も確実です。


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