レイ・ダリオ氏が約50年間のグローバルマクロ経済投資経験から、過去の歴史を研究することで未来を予測する方法を学んだレイ・ダリオ氏の洞察を共有するものです。特に、帝国(オランダ、英国、米国など)の興隆と衰退が常に世界秩序の変化の兆候であったことに着目し、そのパターンを説明しています。レイ・ダリオ氏が提唱する「変わりゆく世界秩序」に関する洞察を解説します。過去の歴史に見られる大国の興亡と通貨の変遷から、現在の世界が直面している状況を読み解き、未来への示唆を探ります。
第1章:歴史から学ぶ、予期せぬ変化への備え
約50年間にわたるグローバルなマクロ経済投資の経験から、私は「自分の生涯でそれまでに起こったことがないからこそ驚かされた」ということを痛感しました。この苦痛を伴う驚きが、過去500年間の歴史における同様な状況を研究するきっかけとなりました。
特に印象的だったのは、1971年に米国が実質的な債務不履行に陥った出来事です。当時は金が国際取引に使われ、ドル紙幣は金と交換できる「小切手」のようなものでした。しかし、米国は歳出が歳入を大幅に上回り、保有する金よりも多くの紙幣を印刷していたため、金が不足し始めたのです。ニクソン大統領はドルと金の交換停止を発表しました。私は株式市場が暴落すると予想しましたが、実際には大幅に上昇しました。これは通貨の切り下げを経験したことがなかったため、私にとって大きな驚きでした。
後に歴史を研究すると、1933年にもルーズベルト大統領が同様にドルと金の交換を禁止したことが分かりました。どちらのケースも、政府が歳入以上の歳出を続け、紙幣を大量に印刷した結果、通貨の価値が下がり、株式や金などの価格が上昇するという結果につながりました。
ここから学んだ最も重要な原則の一つは、「中央銀行が危機を回避するために多くの紙幣を印刷し、株式や金などを購入すると、それらの価値が上昇し、紙幣の価値が下がる」ということです。これは2008年や2020年にも起こり、将来もほぼ確実に起こるでしょう。
これから何が起こるのかを理解するためには、過去に何が起こったのかを理解する必要があります。これが、私が「ビッグサイクル」の研究に没頭した原点です。
この経験から、レイ・ダリオ氏は重要な原則を学びました。
- 原則1: 中央銀行が危機を回避するために大量の紙幣を印刷し、株式や金、一時産品などを購入すると、それらの価格が上昇し、通貨の価値が下落する。これは2008年の住宅ローン債務危機、2020年のパンデミックによる経済危機でも行われ、将来もほぼ確実に起こるだろうと予測しています。
- 原則2: これから何が起こるのかを理解するためには、過去に何が起こったのかを理解する必要がある。
この原則に基づき、氏は過去の歴史、特に1920年代のバブルが1930年代の大恐慌にどう変わったかを研究し、2007年のバブル崩壊を予測して利益を得ることに繋がりました。
第2章:秩序の変化とビッグサイクルとは何か
「秩序」とは、人々がお互いに対応するためのルールのシステムです。国内には統治のための「内部的秩序」(通常は憲法に定められる)があり、国と国の間には「世界秩序」(通常は条約に定められる)があります。これらの秩序は通常、戦争の後に変化します。国内では内戦、国と国との間では国際戦争です。革命的な新しい勢力が、弱体化した古い秩序を打ち破る時に戦争は起こります。
現在の世界秩序は、一般的に「アメリカ世界秩序」と呼ばれています。これは第二次世界大戦での連合国の勝利、特にアメリカが支配的な大国として台頭した後に形成されました。1944年のブレトンウッズ協定では新たな世界の通貨制度が定められ、ドルが世界有数の「準備通貨」として確立されました。準備通貨とは、世界で一般的に受け入れられている通貨のことです。準備通貨を持つことは、最も豊かで強力な帝国になるための主要な要因です。
近年の世界情勢を見る中で、氏が特に注目し、今回の研究をさらに深めたのは、以下の3つの大きな事柄が同時に起こっていることでした。
- 世界各国が債務超過に陥り、金利がゼロに近い中で、債務支払いのために中央銀行が大量の紙幣印刷を開始した。
- 富と価値観のギャップが拡大し、大きな国内対立が発生している(富の再分配を求める左派と、富裕層の財産保護を求める右派の対立、政治的なポピュリズムと二極化)。
- 台頭する大国(中国)と主導する大国(米国)の間で外部紛争が増加している。
これらの事柄は、過去にも同時に発生し、国内および世界の秩序変化に繋がってきたと氏は指摘します。前回これらの事柄が同時に起こったのは1930年から1945年にかけてでした。
私は過去500年にわたる10の最も強力な帝国と、最後の3つの準備通貨(オランダのギルダー、英国のポンド、米国のドル)を研究しました。さらに中国の歴史も600年に遡って研究しました。これらの研究から、帝国やその通貨が興隆し衰退していく、普遍的な「ビッグサイクル」が存在することを発見しました。このサイクルは、約250年続く重なり合うサイクルで発生し、そのサイクルの間には10年から20年の移行期間があります。移行期間は一般的に大きな紛争の期間となります。
帝国の力を比較するために、私は8つの評価基準を用いました。これには教育、独創性/技術、競争力、経済生産高、世界貿易の比率、軍事力、金融センターの力、そして通貨の強さ(準備通貨としての地位)が含まれます。これらの基準は測定可能であり、各国の相対的な強さやサイクルのどの段階にあるかを把握するのに役立ちます。
帝国の力を比較するために、氏は以下の8つの評価基準を用いました。
- 教育
- 独創性および技術開発
- 世界市場における競争力
- 経済生産高
- 世界貿易に占める比率
- 軍事力
- 資本市場のための金融センターの力
- 準備通貨(基軸通貨)としての通貨の強さ
これらの基準は測定可能であり、各国の現在の強さ、過去の強さ
第3章:サイクルを推進する原因と結果の連鎖
ビッグサイクルは単なる出来事の羅列ではなく、論理的な因果関係によって推進されています。典型的な帝国興隆衰退のパターンは以下の通りです。
- 大きな紛争(しばしば戦争)の後の新秩序確立:新しい支配的な大国が台頭し、世界秩序が形成されます。
- 平和と繁栄:誰も新興勢力に挑戦したがらないため、平和な時期が訪れ、経済が成長します。
- 借入と金融バブル:平和と繁栄に慣れた人々は、それを継続するために資金を借りるようになり、金融バブルが発生します。
- 準備通貨の確立:帝国の貿易における比率が増加し、その通貨が国際取引で広く使われるようになり、準備通貨となります。これはさらに借入を増加させます。
- 富の格差拡大:繁栄が増すにつれて富が不均衡に分配され、裕福な層と貧困な層の格差が広がります。
- 金融バブル崩壊と通貨印刷:バブルが弾けると、国は債務返済のために大量の紙幣印刷を余儀なくされます。
- 国内紛争:富の再分配を求める声が高まり、国内での紛争が増加します。これは平和的な革命か内戦として現れます。
- 外部紛争:国内の混乱で帝国が弱体化すると、対等してきたライバルが挑戦してくる傾向があり、国際紛争(最も一般的には戦争)が発生します。
- 新秩序の確立:これらの紛争の結果、新たな勝者と敗者が生まれ、勝者は協力して新たな世界秩序を構築します。
そして、このサイクルが再び始まるのです。この一連の因果関係は、ローマ帝国まで遡っても確認できるほど普遍的なものです。
第4章:ビッグサイクルの3つの局面(1)「上昇期」
1. 上昇期(Rise):
- 強力な革命的リーダーによって始まり、権力を確立し、機能する体制や制度を構築します。
- この段階では、平和と繁栄の期間が訪れます。
- 優れたリーダーシップとシステム(教育、研究開発、インフラへの投資、生産的起業家を育てるための資本主義的アプローチなど)を通じて、国の富と力が高まります。
- 独創性や技術開発が進み、世界市場での競争力が増し、経済生産高と世界貿易での比率が上昇します。
- 貿易路や海外の利益を保護するために軍事力が展開されます。
- 資本市場(貸付、債券、株式市場)が育成され、投資を通じてイノベーションや開発に資金が供給されます。世界最大の帝国は、世界の資本を引き付け、再分配する主要な金融センターとなります(アムステルダム、ロンドン、ニューヨーク、そして台頭する中国の金融センター)。
- 資本家、政府、軍隊が緊密に協力します。オランダ東インド会社や英国東インド会社、米国の軍産複合体、現在の中国のシステムなどが例です。
- 最大の貿易帝国になると、その通貨がグローバルな交換手段となり、世界中の人々がその通貨を貯蓄し、富の貯蔵庫とするようになります。これが基軸通貨です。
- 基軸通貨を持つことで、その帝国は他の国々よりもより多くの資金を借り入れることができるという「法外な特権」を得ます。これにより借金が増加し、金融バブルが始まります。
サイクルの上昇期は、強力な革命的リーダーシップによって始まることが一般的です。優れたリーダーは、敵対者を排除して権力を固め、国がうまく機能する体制や制度を確立し、優秀な後継者を選ぶシステムを作ります。
この時期には、戦いの後、一般的に平和と成長する繁栄が訪れます。国のリーダーは、富と力を高めるための優れたシステムを構築する必要があります。これには、優れた教育、しっかりした人格、勤勉な労働倫理が基盤となります。これらはルールの尊重、社会秩序、低い腐敗につながり、共通の目的のために団結することを可能にします。
教育と勤勉さから、独創性や技術開発が生まれ、世界市場での競争力が高まります。例えば、オランダはハプスブルグ帝国を打倒した後、極めて独創的になり、今日の資本主義の基盤となる船の発明や、世界初の株式会社(オランダ東インド会社)とその資金調達のための株式市場を設立しました。成功する帝国は、世界中の最高の思考を受け入れることで、自身の思考を強化します。
経済生産高が増加し、世界貿易におけるシェアが拡大すると、貿易路や海外の利益を保護するために優れた軍事力が必要となります。この好循環は、収入の成長、教育、インフラ、研究開発への投資を促進します。また、富を生み出す能力を持つ人々を奨励し、力を与えるシステム(資本主義的アプローチ)が必要です。中国ですら、この資本主義的な形態を用いています。
最も重要なのは、資本家、政府、そして軍隊が協力することです。オランダ東インド会社のように、これらが一体となって機能するシステムが巨大な富と権力を生み出します。
最大の貿易帝国となると、その国の通貨が主要な国際交換手段となり、準備通貨として広く受け入れられ、貯蓄されるようになります。**準備通貨であるという「法外な特権」**は、その帝国が他国よりも多くの資金を借り入れることを可能にし、借金の増加と金融バブルの始まりにつながります。
第5章:ビッグサイクルの3つの局面(2)「ピーク期」
2. ピーク期(Peak):
- ピークにいる間、帝国の長所は維持されますが、成功の果実の中に衰退の種が埋め込まれています。
- 裕福な国の人々の労働コストは高くなり、他の国の労働者と比べて競争力が低下します。同時に、他の国々は主導国の技術や方法を学び、競争力を高めます。
- 人々が裕福になると、以前ほど懸命に働かなくなり、贅沢を好み、生産性の低いものを求める傾向があります。極端な場合は大敗的になります。
- 世代が下るにつれて、価値観が変わり、困難を経験せず育った世代は脆弱になります。
- 平和と繁栄に慣れ、それを維持するために過剰な借り入れを行います。これが金融バブルへと向かいます。
- 金融的収益の不均衡により、富の格差が広がります。裕福な人々は自身の資源(より良い教育、政治への影響力など)を使ってその力を強化するため、格差は自己強化されます。
- 貧困層はシステムが不公平だと感じ、憤慨が高まります。
- 基軸通貨を持つことは、必然的に過剰な借り入れと外国の貸し手への多額の債務膨張に繋がります。これは短期的には消費力を高めますが、長期的には国の財政状態を弱めます。借り入れと消費が強いと強力に見えますが、財政は弱っているのです。
- 帝国の維持(国内消費や軍事紛争)に必要な費用が歳入を超え、帝国を維持することが採算割れになります。
- 裕福な国が、より貧しい国々から借り入れを行い、最終的に借金で首が回らなくなります。これは権力移行の初期兆候の一つです。米国は1980年代から中国から借り入れを開始しました。
- 新たな貸し手が不足すると、その通貨を保有していた人々が売り始め、帝国の力は衰退を開始します。
ピーク期にいる間、これらの強みは維持されますが、同時にその成功の果実の中には衰退の種が埋め込まれています。
裕福になった国の労働者の報酬は他国と比較して高くなり、競争力が低下します。同時に、他国の人々は主要国の方法や技術を模倣するため、主要国の競争力はさらに減少します。また、人々は裕福になるとそれほど一生懸命働かなくなり、享楽的、低生産的、あるいは退廃的になる傾向があります。
世代が変わるにつれて価値観も変化します。富と権力を「得た世代」と「継承した世代」では、継承した世代は困難に慣れておらず、贅沢や楽な生活に慣れてしまい、脆弱になります。オランダの黄金時代や英国のヴィクトリア時代は、このような繁栄期でした。
物事がうまくいき続けることに慣れると、人々はそれを維持するために借入を増やし、金融バブルに向かいます。また、経済的収益が不均衡になり、富の格差が拡大します。富裕層は資源を使って自身の力を強化するため、格差は自己強化されます。これにより、裕福な層とそうでない層の間で価値観や政治的な見解に隔たりが生じ、不公平感から憤慨が増大します。
世界の準備通貨を持つことは、必然的に過剰な借入につながり、対外債務が膨らみます。これは短期的には消費力を高めますが、長期的に国の財政状態を弱めます。借入と消費によって帝国は強力に見えますが、実際には財政は弱まっています。
帝国を維持するための国内の過剰消費や国際的な軍事紛争に資金を提供することで、維持コストは収入を上回り、帝国を維持することは採算が取れなくなります。オランダ、英国、米国はいずれも、広がりすぎた領土や利益を守るための高額な軍事費や戦争費用に直面しました。
このサイクルの中で、裕福な国は最終的に、比較的貧しい国からの借入に頼るようになります。これは権力移行の初期の兆候の一つです。米国は1980年代に中国から借入を始めましたが、中国はドルの準備通貨としての地位のためにドルを貯蓄したかったからです。
帝国が新たな貸し手を見つけにくくなると、その通貨を保有する人々は売り始め、帝国の力は衰退を始めます。
第6章:ビッグサイクルの3つの局面(3)「衰退期」
3. 衰退期(Decline):
- 衰退は国内経済の弱体化に、国内紛争または高価な外部戦争、あるいはその両方を伴って到来します。最初は徐々に始まり、そして非常に突然到来します。
- 借金が莫大になり、景気が停滞すると、帝国はもはや借金を返済するために必要な資金を借り入れできなくなり、金融バブルが弾けます。
- 国内で大きな困難が生じ、国は債務不履行か、新たに通貨を大量に印刷するかの選択を迫られます。常に紙幣印刷を選択し、通貨価値が低下し、インフレが高まります。
- 政府の資金調達が困難になり、経済状況が悪化し、ほとんどの人々の生活水準が下がり、富、価値観、政治的な格差が拡大すると、富裕層と貧困層、異なる民族的・宗教的・人種的グループの間の国内紛争が激化します。
- これは政治的過激主義(左右のポピュリズム)に繋がります。左派は富の再分配、右派は富裕層保護を求めます。
- 富裕層への増税が行われ、富裕層が安全な場所、資産、通貨に富を移動させようとします(富の流出)。この流出は帝国の歳入を減少させ、自己強化型の空洞化プロセスに繋がります。流出がひどくなると政府はそれを非合法化しようとし、逃げたい人々はパニックになります。
- 混乱は生産性を弱め、経済のパイが縮小し、それをどう分配するかを巡る紛争が引き起こされます。強力なポピュリストリーダーが台頭し、秩序を取り戻すと約束します。これは民主主義にとって最大の試練であり、無政府状態から強力なリーダーシップへの移行が最も起こりやすい時です。
- 国内紛争が悪化すると、富と権力の再分配のために何らかの形の革命または内戦が勃発します。
- この国内の紛争は帝国を弱体化させ、外部のライバルに挑戦されやすくなります。ライバルが軍事力を構築している場合、大きな国際紛争の危機が高まります。
- 防御のために莫大な軍事費が必要ですが、これは経済が悪化し、最も支出する余裕がない時に生じます。
- 紛争は一般的に力のテストとして解決されます。大胆な挑戦を受けた大国は、戦うか退却するかという困難な選択に直面します。戦って敗北するのが最悪の結果ですが、退却も帝国の弱さを他国に示すことになります。
- 経済状況の悪化はさらに富と権力の戦いを引き起こし、 inevitable に何らかの形の戦争に繋がります。
- 戦争は費用がかかりますが、構造的な変換を引き起こし、世界の富と権力の新しい現実に合わせて新たな秩序を再調整します。
- 衰退する帝国の基軸通貨と負債を保有する者が不信感を抱き、それらを売却すると、ビッグサイクルの終焉となります。歴史上、多くの通貨が価値を失ってきました。
- 米国は現在、歳入を超える莫大な負債を抱え、この赤字をさらなる借り入れと新たな紙幣印刷で賄っています。しかし、大きなドル売りとドル債務の売りはまだ始まっていません。大きな国内および外部紛争は起こっていますが、戦争に至るまでの線はまだ越えていません。
衰退は、国内経済の衰弱、内部紛争、またはお金のかかる外部戦争、あるいはその両方を伴って到来します。一般に、衰弱は徐々に始まりますが、非常に突然訪れることがあります。
借金が莫大になり、景気が停滞すると、帝国は借金を返済するための資金を借り入れできなくなり、金融バブルが弾けます。これは国内に大きな困難をもたらし、国は債務不履行か大量の紙幣印刷かの選択を迫られます。歴史的に国は常に紙幣印刷を選び、通貨価値の低下とインフレを引き起こします。オランダ、英国、米国はいずれも、財政過剰や戦争債務、バブル崩壊に対応するために紙幣印刷を行ってきました。
経済状況が悪化し、多くの人々の生活水準が下がり、富、価値観、政治的な格差がある場合、裕福な人々と貧しい人々、あるいは異なる民族的、宗教的、人種的グループ間の内部紛争が激化します。これは左右のポピュリズムとして現れ、政治的な過激主義につながります。裕福な人々は資産や幸福が奪われることを恐れて、より安全な場所や資産に移動しようとします(資産逃避)。これが帝国の歳入を減少させ、衰退を自己強化します。資産逃避があまりにひどくなると、政府はそれを非合法化することもあります。
このような混乱した状況は生産性を弱め、経済パイが縮小し、資源の分配を巡る紛争を引き起こします。ポピュリストのリーダーが現れ、コントロールと秩序の回復を約束します。これは民主主義にとって最大の試練の時であり、混乱から強力なリーダーへの移行の可能性が高まります。
国内紛争が悪化すると、富と権力の再分配のために何らかの形の革命または内戦が勃発します。これは平和的な場合もありますが、多くの場合は暴力的であり、これにより秩序が変化します。
この国内の紛争は帝国を弱体化させ、国内の弱体化を見た外部のライバルが挑戦してくる傾向があり、大きな国際紛争の危機が高まります。自国と帝国を守るためには巨額の軍事費が必要ですが、これは国内経済が悪化し、帝国が最も資金を拠出する余裕がない時に生じます。
これらの紛争は、実行可能な仲裁システムがないため、一般的に力のテストとして解決されることになります。挑戦を受けた大国は、戦うか退却するかという困難な選択に直面します。戦って敗北するのが最悪の結果ですが、退却も弱さを示すことになり、ライバルに道を譲ることになります。
最終的に、衰退する帝国の準備通貨と負債を保有するものが不信感を抱き、それらを売却する時、ビッグサイクルは終焉を迎えます。約750の通貨が1700年以降に存在しましたが、現在残っているのは20%未満で、全て価値が低下しています。オランダや英国の例では、戦争後の巨額債務と通貨暴落がサイクルの終焉をもたらしました。
紛争の後には、新たな勝者が協力して、敗者の債務や政治制度を再構築し、新たな世界秩序を確立します。そして、古いサイクルと帝国が終わり、新たなサイクルが始まるのです。
第7章:現在の状況と未来への示唆
私たちの現在の状況を見てみましょう。提供された情報時点では、米国は歳入を超える莫大な負債を抱え、この赤字をさらなる借入と新たな紙幣印刷で賄っています。しかし、大きなドル売りやドル建て債務の売りはまだ始まっていません。典型的な理由による大きな国内紛争や外部紛争は起こっていますが、戦争に至るまでの一線はまだ超えていません。
歴史上のほとんどの帝国には、輝かしい時期と必然的な衰退があります。衰退を逆行させることは困難ですが、不可能ではありません。
帝国の「生命徴候」とも言える指標(教育、技術、競争力、経済、軍事、金融、通貨など)を観察することで、その国がサイクルのどの段階にいるかを判断し、将来の寿命を推定することができます。これは人間の健康診断に似ています。健康状態に注意を払い、改善することで寿命を延ばせるように、国家もバイタルサインに注意を払い、行動を変えればサイクルを延ばすことは可能です。
国家の最大の戦争は、多くの場合、自身との戦いです。成功を継続するための困難な決定ができるかどうかにかかっています。
私たちがどうするべきか、という問いは、最終的に二つのことに絞られます。
- 出費よりも多く収入を得ること。
- お互いに敬意を持って大切にすること。
しっかりした教育、独創性、競争力の維持など、私が述べたその他の全ての要素は、この二つの目標を達成するための方法です。これを実行しているかどうかは、評価するのに難しいことではありません。
個人的にも、そして集団としても、健康になりたい人がバイタルを改善するために実行するように、行動を起こしましょう。世界がどのように動き、その動きにうまく対応するための原則を共有する理由は、私たちが今置かれている状況と直面する困難を認識し、この時代をうまく渡っていくために必要な賢明な決定をしてほしいからです。
もしこのテーマにさらに興味をお持ちであれば、私の著書「変わりゆく世界秩序」で詳しく学ぶことができます。また、ウェブサイト(economicprinciples.org)やソーシャルメディアでもこの対話を続けていければと思います。
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