「相場追認論」は、メディアが市場価格を「正しい」と正当化し、投資家の群衆心理を煽る現象です。これにより、実態経済と乖離したバブル形成や崩壊を招くリスクがあり、過去の金融危機もその一例です。賢い投資家は、多角的な情報源、長期的な視点、そして群衆に流されない独立した思考を持つことで、このリスクから自身の資産を守る必要があります。
1. あなたは大丈夫?「相場追認論」があなたの情報認識を歪めている可能性
日々流れてくる経済ニュースやSNSのトレンドに、知らず知らずのうちに踊らされていませんか?「相場追認論」とは、まさにそうしたメディアの報道が、いかに私たちの情報認識を歪め、投資行動に影響を与えうるかを説明する概念です。もしあなたが「みんなが言っているから正しい」と感じたり、短期的なトレンドに敏感に反応したりする傾向があるなら、あなたの資産もまた、この見えない力によってリスクに晒されているかもしれません。
2. 相場追認論とは何か?メディアが群衆心理を煽るメカニズム
トレンドフォローセオリーとプライスコモベーションセオリー
「相場追認論」は英語でトレンドフォローセオリー(Trend-Following Theory)やプライスコモベーションセオリー(Price Conformation Theory)と呼ばれ、主に群衆心理が市場の動きを説明できるとされています。これは、投資家が他人と同じ行動をとろうとする心理によって、市場の価格変動が増幅される現象を指します。
市場の動きを「正しい」と正当化するメディアの報道
この理論に基づくと、メディア(YouTubeやニュースなど)は、形成された価格を正当化する意味で、その価格に焦点を当てるような表現をする傾向があります。例えば、株価が上昇している局面では、その市場の動きを「正しい」ものと見なし、それを肯定するような表現をすることで、投資家(群衆)はさらにその動きに従いやすくなります。つまり、市場の動きが**「正しい動き」として見なされ、それが正当化される**ことで、投資家の群衆心理が形成されていくというわけです。
筆者(マイキーさん)は、NVIDIA株やビットコインの例を挙げ、「上がっているからこそリスクを言う」「下がっているからこそメリットを言う」という逆張りの表現をすると、批判のコメントが殺到すると指摘しています。これは、まさに群衆心理に同調した投資家(「同質化した投資家」と称される)の反応であり、メディアの報道が彼らをその心理状態へと導いている証左と言えるでしょう。
3. 過去のバブル・金融危機から学ぶ:相場追認論が引き起こした悲劇
相場追認論に陥るリスクは、学術的な見解や過去の事例からも指摘されています。
インターネットバブル:幻想と化した「革命」の顛末
市場が上昇している時、メディアがそれを「正しい」と報じ続けると、過剰な購入が起きます。これにより実態価格を大きく超える状態となり、結果としてバブルが形成されます。インターネットバブルは、株価が上昇しているから価値があるという認識が市場で広がり、モメンタム資金が集中した結果、最終的に崩壊しました。崩壊が始まると、メディアは一転して「インターネット革命は幻想であった」と批判的な論調に変わり、投資家心理を冷まし、さらに価格下落を加速させたのです。
リーマンショック:マイホーム神話とサブプライムローンの闇
リーマンショックも相場追認論の良い例です。当時は「住宅価格は常に上昇する」という考えが広まり、メディアは**「マイホームを購入することが人生最大の投資である」と煽りまくっていました**。サブプライムローンの拡大も批判されず、「誰でもアメリカは家が持てる、成功の象徴である」と報じられ続けたのです。しかし、問題が起きるとメディアは一転、「サブプライムリスクを徹底的に解説する」ようになり、金融機関を叩き始めました。これにより、かつて最大投資とされたものが最大の損失を生む事態となりました。
ブラックマンデー、平成バブルに見る群衆心理の暴走
他にも、ブラックマンデーでは、先物取引におけるトレンド追随型の売買が連鎖し、メディアでそれが報じられた結果として市場の暴落を招いたとされています。平成バブルでは、高い株価収益率(PER)が当然と追認されるような表現がメディアで溢れ、その後の日経平均の大幅下落につながりました。これらの事例は、市場価格が実態経済からかけ離れ、指標を無視した非合理的な投資行動が引き起こされた結果であり、相場追認論のリスクを如実に示しています。
4. なぜメディアは相場追認論に陥るのか?その背景にある構造的な問題
メディアが相場追認論に陥りやすい傾向には、いくつかの理由が挙げられます。
視聴率・読者数を追い求める短期的な視点
「トレンドネタ」は、確実に人々の目に留まり、読まれる傾向にあります。また、群衆心理を利用した記事は、短期間で多くのアクセスを集めることができます。これは報道機関などの企業にとって、支持を得るという点でプラスに働くため、メディアは短期的な動きに過剰に反応し、長期的な背景を見ようとしない、あるいは語らない傾向があるのです。
専門知識の不足と安易なストーリー提供
市場の動きが激しい時期や、ジャーナリスト側の専門知識が不足している場合、メディアは受けやすい(乗りやすい)情報に乗りがちです。また、視聴者や読者に受け入れられやすい「ストーリー提供」を行うことで、企業としての利益を得ようとします。しかし、これにより情報は単純化され、本質的な部分が見過ごされることになります。
メディアもまた「群衆」に流される時代
皮肉なことに、メディア自身もまた「群衆」に流されている状態だと筆者は指摘します。批判される可能性のある意見や、群衆と異なる視点からの報道は敬遠されがちです。その結果、投資家や一般視聴者の誤解を助長し、市場の過剰反応をさらに強化し、「日本経済は良い悪いどっち?」といった矛盾した内容の報道が増えるリスクがあります。
5. 賢いビジネスマンが実践すべき3つの情報戦略
このような相場追認論のリスクから身を守り、合理的な判断を下すためには、情報を受け取る側の「質」を高めることが不可欠です。
1. 多様な情報源から冷静に分析する「見る側の質」
冷静に分析するために、外部や非直接的な情報をどれだけ得られるかが重要です。例えば、ある経済理論が正しいと主張する論文を読んだなら、その理論を批判する別の論文や理論も読み、どちらが合理的で現代にマッチしているかを見極める必要があります。経済学や経営学の理論にも、はまる時期とはまらない時期があるため、多角的な視点から情報を吟味することが肝要です。
2. 短期的な心地よさに惑わされない「長期的な視点」
短期的なトレンドや、聞いていて心地よい情報は、往々にして短期的な思考につながります。例えば、「2年間で1億円稼ぐ方法」といった短期的な高リターンの話は注目されやすいですが、「10年間かけて5000万円稼ぐ方法」のような長期的な視点こそ、本来は重要です。トレンドに振り回されず、一見面白くない話でも、長期的な目線で役立つかどうかを判断する視野の広さを持つことが対策となります。
3. あえて群衆心理に逆らう「独立した思考」
多くの人が「面白い」「登録者が多いから正しい」と思っている情報に対し、それが「過剰な反応ではないか」と気づいた時に、どのように警戒できるかが重要です。筆者は、上がっている時にはリスクを、下がっている時にはメリットを語るという「逆張り」の姿勢を貫くことで、批判はされるものの、専門家からは評価されることがあると語っています。群衆と同じ意見に流されず、独自の視点を持つことが、非合理的な投資行動を避けるための鍵となるでしょう。
6. まとめ:情報過多時代を生き抜くためのリテラシー
相場追認論は、メディアが市場の動きを過度に単純化し、群衆心理を煽ることで、実体経済と乖離したバブル形成や崩壊を招くリスクがあることを示しています。ITバブルやリーマンショックなどの歴史的な事例は、その危険性を明確に物語っています。
私たちは情報を受け取る側として、情報を鵜呑みにせず、多角的な視点から冷静に分析し、長期的な目線で物事を捉え、群衆に流されない独立した思考を持つことが求められます。これこそが、情報過多の時代において、自身の資産と未来を守るための最も強力な武器となるでしょう。


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