SNS起業家業界は現在、市場の成熟と飽和、そしてコンテンツの質の大幅な向上に直面しています。これにより、かつてメルマガやアメブロ、Instagramで簡単に商品が売れた時代は終焉を迎え、多くの企業塾や大規模講座が終了しています。現状は、リスト獲得や売上が困難になり、動画編集費やサブスク費用、人件費などの経費が大幅に増加。さらに、LINEやFacebookなどのアカウント停止リスクも高まっています。この状況で生き残るには、質の高い価値提供と、キャッシュフローを重視した堅実な事業経営が不可欠です。特に、広告費や人件費、税金などを考慮した数字の把握と、計画的な運用が重要だと強調されています。
SNS起業家界で起きている変化の兆候
最近のSNS起業家界では、長年続いてきた大規模な企業塾のコンテンツが次々と終了したり、最終募集を行ったりする現象が確認されています。これは、これまで大規模に活動してきた起業家たちでさえも、「リスト(見込み客)が集まりにくくなった」「リストに対してセールスをかけても、人が集まらない、そして売れない」という課題に直面しているためです。全体として「売上が下がっている」という声が多く聞かれ、かつてのように簡単にリストを獲得したり、講座を売ったりできる時代ではなくなってきているのが現状です。
過去を振り返ると、Instagramやメルマガ、アメブロなどで告知をするだけで、比較的簡単に商品が売れる時代がありました。年間1000万〜2000万円ほどの売上を上げていた起業家も多かったものの、最近ではそうした人々もビジネスの厳しさを感じています。さらに、以前はもっと大きな売上を出していた起業家でも、既存のリストが「枯れた」状態になり、売上が上がらないというケースが増加しているとのことです。
市場の成熟と質の向上による課題
このようなSNS起業家界の変化の根底にあるのは、市場の成熟と飽和状態への到達だと分析されています。特に2014年から2016年頃に女性起業家界が大きく盛り上がった時期は、SNSを活用したビジネスがまだ珍しかったため、簡単な告知でも物が売れていました。しかし、現在(2025年時点)では、女性起業の波が始まってから10年以上が経過し、多くの消費者がすでに様々な講座を購入し尽くしている状況にあります。
起業の基礎を学ぶ企業塾はもちろんのこと、スピリチュアル系、コーチング、アロマセラピー、整理収納アドバイザーなど、ありとあらゆるジャンルのコンテンツ講座が提供されてきました。現在では、InstagramやSNSマーケティングの講座など、比較的手軽な価格帯の講座も含め、複数の講座を受講している人が圧倒的に多いと述べられています。実際に個別相談の場でも、「〇〇や△△の講座を受けたが、まだ成果が出ていない」という声が多数聞かれるとのことです。これは、市場が成熟し、初期のアーリーアダプター層だけでなく、これまで情報を受け取る側だった一般の主婦層などもようやくビジネスに参入し始めた段階であることを示唆しています。特にコロナ禍でオンラインビジネスが流行した時期に多くの人が参入し、結果的に講座が多数販売されたものの、継続的な売上を上げるのが難しい状況に陥るケースが増えているのが現状です。
もう一つの大きな要因は、SNS業界全体のコンテンツの質が飛躍的に向上してしまったことです。例えばYouTubeでは、プロ並みの高品質な編集、フルテロップ、オープニングムービー、そして質の高いコンテンツが標準となっています。2014年〜2015年頃には、編集されていない動画や簡単なサムネイルでも十分でしたが、今では企画、リサーチ、原稿作成、撮影、動画編集、サムネイルデザインなど、多くの工程にプロの関与が必要なレベルになっています。
毎日動画を投稿しようとすると、制作費だけで月に80万円、さらにスタジオ費用などを加えると200万円を超えるコストがかかることもあります。広告収入だけではこれらの費用を賄うことが難しく、個人が容易に参入できる領域ではなくなっています。Instagramでも、プロ並みのグリッド投稿、高クオリティのリール動画、そして毎日のストーリーズ更新が当たり前になり、もはや一人で全てのクオリティを維持してビジネスを行うのは非常に困難な状況になっているのです。
固定費の増加とキャッシュフローの現実
市場の成熟と参入の難しさ、そして売上の停滞に加え、SNS起業家は固定費の増加という厳しい課題にも直面しています。AI関連のサブスクリプション費用や、Zoom、StreamYard、Canva、ChatGPTといったビジネスツールの利用料が上昇し、毎月の固定費が以前よりもはるかに高くなっています。外部に制作を委託する費用も増加している一方で、売上が下がっているため、多くのSNS起業家が「息も絶え絶え」の状態でビジネスを続けているのが現状です。
年間数千万円から数億円規模の売上を上げるトップ起業家でさえも、広告費、事務所の維持費、人件費といった多額の経費が重くのしかかり、キャッシュフローが非常に厳しい状況にあると報告されています。中には、数千万円から億単位の借金を抱えている起業家も少なくない現実があります。表面上は華やかに見えるSNS起業家界の裏側では、売上減少と経費増加による資金繰りの逼迫が深刻化しているのです。
さらに、LINE、Facebook、Instagram、YouTubeといった主要なSNSプラットフォーム自体も規制が厳しくなっており、アカウントBAN(停止)の事例が頻繁に発生していることも、SNS起業家にとって活動基盤を失うリスクを高め、事業継続の不安定要素となっています。
生き残るための「経営」という本質
現在のSNS起業家界の状況は、かつて隆盛を極めた男性向け情報商材ビジネスの終焉期と非常に似ていると指摘されています。当時は「ワンクリックで1億円」といった手軽な儲け話を謳う商材が流行し、最終的には破綻や逮捕者が出る事態となりました。同様に、現在も「簡単に稼げる」といった発信が見受けられますが、実際には「毎日投稿」「リスト集め」「無料セッション」「セールス」といった地道で大変なプロセスを踏まなければならず、手軽さを求める心理は最終的に投資詐欺などにつながる危険性も示唆されています。
では、この厳しい時代にSNS起業家として生き残るためには何が重要なのでしょうか。その答えは、「質の高い、真に価値のあるものを実直に提供し、それをキャッシュフローを厳しく見ながら運用していく」こと、つまり「ちゃんとビジネスを運営する」ことに尽きると述べられています。かつては適当に発信しても物が売れた時代もありましたが、今は通用しません。事業を組織化し、仕組み化し、しっかりとした財務体制を構築して、数字を見ながら運用していく「経営」の視点が不可欠なのです。
特に、SNS起業家、中でも女性起業家は「数字」を苦手とする人が多いため、広告費、経費、人件費、そして税金などを正確に計算し、最終的に利益が残るかを常に把握することが極めて重要です。市場が飽和しているため、新規顧客の獲得には広告投資が不可欠ですが、その広告の効果をCPA(顧客獲得単価)などで厳しく分析し、売上だけでなく、広告費を差し引いた上で確実に利益が確保できているかを見極める必要があります。
多くの企業塾が閉鎖に追い込まれている現状は、従来の「毎日投稿してリストを集め、セールスをかける」というやり方では、もはや収益を上げられなくなったことを如実に示しています。業界のトップランナーと目される起業家たちも、すでにAI事業へのシフトや講座内容の見直しなど、事業の方向転換を図っており、時代の変化に対応しようとしています。
これからのSNS起業家が持つべき選択肢と心構え
SNS起業家として今後も活動を続けるためには、「経営」の視点と、そのための実践が不可欠です。具体的には、数字を見ながら新規顧客獲得のための広告投資を行い、獲得した顧客を丁寧に育成(ナーチャリング)し、営業・クロージングを通じて売上を上げます。さらに、その売上が広告費、人件費、サブスク費用、事務所費用などを差し引いた上で、きちんと利益として残るように計算し、税金対策まで含めて管理するという、非常に現実的で地道な経営努力が求められます。
まとめ
SNSコンテンツの質の大幅な向上があり、YouTubeやInstagramなどでのプロ並みの編集や企画、制作には莫大なコストがかかるようになっています。また、ZoomやAIツールのサブスク費用、人件費なども増大し、経費が全体的に上昇している一方、売上は低下傾向にあります。LINEやFacebook、YouTubeなどでアカウント停止(BAN)のリスクも頻繁に発生していることも課題です。実際に、長年続いた大規模な企業塾や講座が続々と終了しており、これはかつての男性情報商材業界の終焉と似た状況だと指摘されています。
このような厳しい現状で生き残るために最も重要だとされるのは、「経営」という意識を持つことです。もはや「好きや得意なことで簡単に稼ぐ」という考え方は通用せず、質の高い価値提供を実直に行い、キャッシュフローを常に把握しながら事業を運用していく必要があります。具体的には、広告効果(CPA)や利益率、人件費、税金などを詳細に計算し、数字に基づいた堅実な財務体制を築くことが不可欠です。闇雲な発信ではなく、組織化された仕組みの中で戦略的にビジネスを進めることが、今後のSNS起業家にとっての鍵であると結論付けられています。
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