脂肪肝は「沈黙の臓器」とも呼ばれる肝臓の病気であり、かなり進行するまで自覚症状が出ないことが特徴です。
現在、成人の3人に1人が脂肪肝であるとされており、お酒を飲まない「痩せ型脂肪肝」の方も急増しています。しかし、脂肪肝にならないための予防策と、すでに脂肪肝である場合の改善策は同じ方法であるとされています。
これらの習慣は、年齢に関係なく肝臓の健康を取り戻し、「20代の肝臓」を目指すことを可能にし、糖尿病や心血管障害、癌といった他の生活習慣病の予防にもつながります。
肝臓の重要性と脂肪肝の現状
肝臓は、代謝・解毒・免疫を担う「健康の肝心要」な臓器です。
自覚症状が出にくい「沈黙の臓器」のため、健康診断での指摘が重要です。
現在、成人の3人に1人が脂肪肝とされ、その約3割は「お酒を飲まない痩せ型」で、急速に増加しています。脂肪肝は肝細胞に脂肪が溜まる病気で、早期の発見と対策が健康維持の鍵となります。
脂肪肝の進行と肝臓の再生能力
脂肪肝は、肝臓の細胞に脂肪の雫が溜まった状態です。放置すると「脂肪肝炎」を引き起こし、肝細胞が壊れては治るを繰り返す中で繊維化が進み、「肝硬変」へと悪化します。肝硬変は腹水や黄疸などの症状が現れ、再生能力が失われる深刻な状態です。通常、肝臓は最大70%切除しても3ヶ月で再生する驚異的な能力を持ちますが、脂肪肝炎や肝硬変ではその力が失われてしまいます。世界の成人38%が脂肪肝であり、他人事ではありません。
肝臓の最大の毒は「甘い飲み物」
肝臓にとって最大の「毒」は、お酒ではなく「甘いドリンク」です。清涼飲料水、100%果汁ジュース、野菜ジュース、スポーツドリンクなどがこれにあたります。WHOも警鐘を鳴らすように、これらの加糖飲料は肥満、脂肪肝、2型糖尿病増加に明確に関与しています。特に液体から摂る加糖は、固形の果物と異なり、消化酵素の働きが間に合わず肝臓を直接攻撃するため、急速な吸収スピードが問題視されます。これは、脂肪肝患者が急増した最大要因の一つとされています。
年齢と性別で異なる脂肪肝のリスク
脂肪肝のリスクは年齢と性別で異なります。男性は30代から、女性は女性ホルモン減少後の40代後半から急増する傾向にあります。女性ホルモン(エストロゲン)は脂肪を皮下脂肪に蓄えやすくし、内臓脂肪の蓄積をブロックするため、閉経後に脂肪肝リスクが高まります。子供は成長ホルモンの影響で脂肪肝になりにくいですが、水代わりに加糖飲料を飲むと例外です。30代からの食生活が、その後の肝臓の健康を大きく左右します。
脂肪肝を改善・予防する7つの習慣
習慣1:体重を7%減らすこと
体重を7%減らすことが脂肪肝炎の改善に最も重要であり、ガイドラインにも明記されています。例えば、体重70kgの方であれば約4.9kgの減量を目指し、3ヶ月での達成を目標に毎日1回体重を記録することが推奨されます。体重を減らすことで肝臓の脂肪がエネルギーとして使われ、肝炎が改善することが科学的に証明されています。見た目では痩せていても脂肪肝になる「痩せ型脂肪肝」の方もいますが、その改善方法についてはまだ医学会で結論が出ていないものの、食生活の改善は推奨されます。痩せ型脂肪肝の方は筋肉量が少ないことが特徴の一つで、糖を貯蔵する場所が肝臓に集中しやすいため、脂肪として蓄積されやすい傾向があります。
習慣2:飲み物を水、お茶、ブラックコーヒー(無糖炭酸水も含む)にすること
飲み物を水、お茶、ブラックコーヒー(無糖炭酸水も含む)にすることが挙げられます。肝臓にとって最大の毒は甘いドリンク(加糖飲料)であるとされており、市販のオレンジジュース(100%果汁含む)、野菜ジュース、エナジードリンク、スポーツドリンクなどは避けるべきです。ブラックコーヒーは肝臓に良いという複数のエビデンスがあります。甘い飲み物が肝臓に悪い理由は、砂糖に含まれる果糖が肝臓を直接攻撃すること、そして液体であるために単位時間あたりの吸収スピードが速く、酵素の働きが間に合わず、果糖がダイレクトに肝臓へ運ばれてしまうためです。固形の果物であれば、ゆっくり時間をかけて食べることで果糖が小腸でブドウ糖に変換されるため、問題ないとされています。
習慣3:糖質(ご飯、パン、麺、間食)の摂取量を半分にすること
糖質(ご飯、パン、麺、間食)の摂取量を半分にすることが推奨されます。健康診断で脂肪肝を指摘される人の多くは、全エネルギー量の7〜8割を糖質から摂取しているため、これらの糖質の摂取量を減らすことが重要です。ただし、糖質を完全にゼロにする(糖質制限)ことは推奨されません。これは、他の栄養素の摂取量が増えすぎたり、便秘になるリスクがあるためです。糖質は「悪者」ではなく、その「摂りすぎ」が問題とされています。
習慣4:食物繊維(野菜など)の摂取量を2倍にすること
食物繊維(野菜など)の摂取量を2倍にすることが挙げられます。脂肪肝の患者さんは食物繊維の摂取量が極端に少ないことが分かっているため、野菜に限らず、食物繊維が豊富な食品を積極的に摂ることが推奨されます。
習慣5:タンパク質を適切に摂取すること
タンパク質を適切に摂取することが重要です。特に筋肉量が少ない方には、1食あたり20gのタンパク質を摂ることが推奨されます。筋肉は肝臓とともに糖をグリコーゲンとして蓄える場所であり、筋肉量が少ないと肝臓に脂肪が蓄積されやすいためです。プロテインパウダーなどを利用する場合でも、砂糖や加糖ブドウ糖液糖が添加されていないものを選ぶことが重要です。
習慣6:加工食品(超食品)の摂取を減らすこと
加工食品(超食品)の摂取を減らすことが挙げられます。カップラーメンやレトルト食品などの加工食品(超食品)には、加糖ブドウ糖液糖が9割方含まれていることが多いため、完全に避けることは難しいですが、可能な限り摂取を減らすことが目標とされています。
習慣7:運動、特に筋力トレーニングを1日10分以上行うこと
運動、特に筋力トレーニングを1日10分以上行うことが推奨されます。運動習慣がない方が多いため、最初のステップとして筋力トレーニングが推奨されており、筋肉量と肝臓の健康には密接な関わりがあります。
知っておきたい肝臓の常識と誤解
「痩せ型脂肪肝」は、筋肉量が少ないために糖を肝臓に蓄えやすい体質が原因の一つです。見た目より肝臓の中身を綺麗にすることが重要。意外なことに、「ウコン」は肝臓専門医が推奨しないどころか、肝臓障害を引き起こす可能性があり、避けるべきです。毎日お酒を飲む人の9割は脂肪肝ですが、適切な習慣で肝臓へのダメージを最小限に抑えることは可能。生活習慣を見直すことで、お酒を楽しみつつも肝臓の健康を保ち、20代の肝臓を取り戻すことは現実的です。
まとめ
脂肪肝は「沈黙の臓器」とも称される肝臓の病気であり、その最大のやっかいな点は、病状がかなり進行するまで自覚症状がほとんど現れないことです。そのため、気づかないうちに悪化しているケースが少なくありません。
驚くべきことに、現在では成人のおよそ3人に1人が脂肪肝であるとされており、その中でも特筆すべきは、お酒をほとんど飲まない方や、一見するとスリムに見える「痩せ型脂肪肝」の人が急速に増えているという現状です。これは、脂肪肝がもはや飲酒習慣のある人に限った病気ではないことを示唆しています。
しかし、脂肪肝にならないための予防策と、すでに脂肪肝と診断された場合の改善策は、実は同じ方法であるとされています。つまり、生活習慣を見直すことが、予防にも治療にも繋がるということです。これらの習慣とは、食生活の改善、適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理などが挙げられます。
これらの健康的な習慣を実践することは、年齢に関係なく肝臓の健康を劇的に改善し、まるで「20代の肝臓」のように若々しい状態を取り戻すことを可能にします。さらに、肝臓の健康は全身の健康と密接に関わっているため、脂肪肝の予防・改善は、糖尿病、心血管障害(心臓病や脳卒中など)、そして特定の癌といった、他の深刻な生活習慣病の予防にも繋がるとされています。肝臓を健康に保つことは、健康寿命を延ばし、活力ある毎日を送るための基盤となるのです。


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