「尿で寿命は決まる 泌尿器の名医が教える 腎臓・膀胱 最高の強化法」の書評

健康
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排尿時間(排尿にかかる時間)は、私たちの健康状態を測る重要なバロメーターとなり得ます。特に、約21秒で排尿が完了するという事実は、おしっこ年齢を測る重要な指標となります。

腎臓 → 膀胱 → 尿意 → トイレ
血管の老化により腎臓のろ過機能が低下すると頻尿になる可能性が高い

なぜ排尿時間は健康状態の指標となり得るか?

  • 加齢による影響
    年齢を重ねると、膀胱を支える筋力が低下したり、男性の場合は前立腺肥大症といった要因が加わり、排尿にかかる時間が徐々に長くなる傾向があります。研究チームが21歳から94歳の男女を対象に行った調査でも、若い世代では排尿時間が21秒前後であることが確認されていますが、加齢とともに排尿時間が伸びるという結果も明らかになっています。
  • おしっこ年齢の進行
    もし排尿が約21秒で終わらず、尿がちょろちょろっとしか出ない状態になった場合、それはおしっこ年齢が進行しているサインと言えます。
  • 全身の健康状態の反映
    おしっこ年齢は、単に尿が出にくいという不便さにとどまらず、膀胱や腎臓を含む泌尿器系全体、さらには全身の健康状態を反映する指標でもあります。尿の状態や排尿時間に注意を払うことで、体全体の健康を維持し、元気で長生きするための大きな手がかりを得ることができます。
  • 体の異変のサイン
    日常生活の中で排尿時間が変化したり、スムーズに排尿できなくなるといった症状が見られた場合、それは体が何かを訴えているサインかもしれません。そのような場合には、専門家のアドバイスを受けたり、生活習慣を見直すことが健康を守る第一歩となります。

このように、排尿時間は加齢による身体機能の変化や泌尿器系の状態、ひいては全身の健康状態を反映する可能性があるため、健康状態の指標となり得ると言えます。

頻尿に関係する病気

  • 高血圧
    高血圧は心臓に負担をかけ、動脈硬化を進行させ、頻尿と関連がある可能性があります。
  • 動脈硬化
    動脈硬化が進行すると、膀胱への血流が悪くなり膀胱が硬くなることや、腎臓の濾過機能が低下することにより頻尿を引き起こす可能性があります。
  • 糖尿病
    高血糖により尿の量が増加し、頻尿を引き起こします。
  • 慢性腎臓病
    腎臓が正常に尿を濃縮できなくなるため、尿の量が増え、特に夜間の頻尿を引き起こすことがあります。
  • 腎不全
    慢性腎臓病が進行した状態であり、同様に尿の濃縮機能が低下し頻尿を引き起こすことがあります。
  • 神経障害
    脳からの排尿に関する指令が正しく伝わらないことにより、切迫性尿失禁という形で頻尿を引き起こす可能性があります。
  • 泌尿器の炎症
    膀胱などの泌尿器系の炎症が、切迫性尿失禁による頻尿の原因となることがあります。
  • 前立腺肥大症
    主に男性に見られ、肥大した前立腺が尿道を圧迫することで、排尿困難、残尿感、そして頻尿を引き起こすことがあります。
  • 過活動膀胱
    膀胱が過敏になり、自分の意思とは関係なく尿意を感じやすくなり、頻尿や尿意切迫感を引き起こすことがあります。

これらの病気や状態は、頻尿の背後に潜んでいる可能性があるため、頻尿が続く場合は専門医の診断を受けることが重要です。

夜間頻尿

  • 夜間頻尿は、夜中に1回以上トイレに起きる症状のことです。日中の頻尿(8回以上)と同様に、単なる不便な現象ではなく、背後に大きな病気が隠れているサインである可能性があると述べています。
  • 夜間頻尿は、高血圧、動脈硬化、糖尿病といった生活習慣病と深く関連している場合があります。
  • スウェーデンの研究によると、夜間に3回以上トイレに起きる人の死亡率は、2回以下の人の約2倍になるという衝撃的な事実が分かっています。これは、夜間頻尿そのものが命を縮めるのではなく、命を縮めるような病気の兆候である場合が多いためです。
  • 夜間頻尿に強く関係している原因の一つに、細胞の錆(酸化ストレス)があります。酸化ストレスによって膀胱で生成される一酸化窒素が減少し、膀胱が硬くなることが夜間頻尿の原因となります。
  • 糖尿病の疑いがある場合、夜間の排尿回数が増えるだけでなく、尿の量も増える傾向があります。また、喉の渇きで目が覚めることもあります。
  • 腎臓の機能低下も夜間頻尿の重要な原因の一つです。腎臓が正常に尿を濃縮できなくなると、尿の量が増えて夜中に何度もトイレに行く必要が出てきます。慢性腎臓病や腎不全ではこのような症状が顕著に現れます。
  • 膀胱の柔軟性の低下も夜間頻尿の原因となります。加齢とともに腎臓の機能が低下し、膀胱の柔軟性が失われると、おしっこを溜める力が弱くなり、頻繁にトイレに行く必要が生じます。膀胱の柔軟性は、血管の健康状態と関連しており、動脈硬化によって膀胱への血流が悪くなると硬くなってしまいます。
  • 加齢も夜間頻尿の一般的な要因ですが、単なる老化現象として放置すべきではないとされています。
  • 頻尿や夜間頻尿を改善するためには、腎臓に気を遣う生活を送り、低下してしまった腎臓の機能を回復させることが重要です。具体的には、腎臓を錆びさせない(アンチエイジング)ことが大切で、ストレスの軽減、適度な運動、カロリー過多を避ける、肥満を防ぐ、リンの過剰摂取に注意するなどが挙げられます。
  • 夜間頻尿を含めた尿トラブルの改善には、アルギニンやシトルリンといった栄養素を含む食品の摂取が推奨されています。これらは体内で一酸化窒素の生成を助け、膀胱を柔軟に保つ効果が期待できます。
  • ノコギリヤシのサプリメントは、前立腺肥大症による夜間頻尿の軽減に効果があるとされています。
  • 水分摂取を制限することは、夜間頻尿の根本的な解決にはならず、むしろ体に悪影響を及ぼす可能性があります。1日1.5〜2リットルを目安に水分を摂取することが推奨されています。
  • 夜間頻尿の改善には、肛門エクササイズ骨盤底筋体操スクワットプランクなどの運動が効果的であると紹介されています。これらの運動は、膀胱周りの筋肉を刺激し、機能を改善する可能性があります。
  • 軽い全身運動も夜間頻尿の改善に有効であり、高齢者向けの運動教室の研究で効果が確認されています。特にウォーキングは推奨されており、下腹部の筋肉を意識することで膀胱の筋肉を間接的にストレッチする効果が期待できます。
  • 血管を若々しく保つことは、腎臓と膀胱を守る上で非常に重要です。活性酸素による血管の劣化は、腎臓や膀胱の機能低下に繋がり、夜間頻尿などのトラブルを引き起こしやすくなります。抗酸化作用のある食品を積極的に摂取し、塩分と糖質の摂取量を控えることが大切です。

尿意を我慢できない症状

尿意を我慢できず、トイレに間に合わないという症状は、切迫性尿失禁と呼ばれます。これは、膀胱が過敏になり、自分の意思とは無関係に尿が漏れてしまう状態です。

主な原因としては加齢が挙げられます。統計によると、40歳以上の男女の約12%、70歳では約20%の人が切迫性尿失禁を経験しています。

加齢以外にも、以下の原因が考えられます:

  • 脳からの指令が正しく伝わらない神経障害
  • 泌尿器系の炎症

また、特定の刺激によって尿意が誘発されることもあります。例えば、水の音を聞いたり、手を洗ったりするといったケースがあります。これは条件反射によるもので、脳が膀胱を収縮させる指令を送ることで起こります。

切迫性尿失禁の対策としては、薬物療法が有効です。膀胱の過敏性を抑える薬が用いられ、症状を軽減することができます。

この問題も、他の尿トラブルと同様に、一人で悩む必要はありません。専門家に相談し、適切な治療を受けることで生活の質を大きく改善することができます。

切迫性尿失禁は、抗コリン薬の内服や骨盤底筋体操、膀胱訓練などの治療で改善が期待できます

骨盤底筋を鍛え切迫性尿失禁を緩和
椎間板ヘルニアを患った際、骨盤底筋を鍛えることで症状が軽減するという話を聞き、骨盤底筋のストレッチを始めました。それから1年が経ちますが、ストレッチを始める以前は、耐え難い尿意に悩まされていました。しかし、最近になってふと気づいたのですが、...

個人的メモ

尿の状態や排尿に関するトラブルから全身の健康状態を知り、対策することで健康寿命を延ばす方法が解説されています。

1. 絶対放置するな!夜中に何度もトイレに行く人は要注意

  • 夜間の頻尿(1回以上)や日中の頻尿(8回以上)は、単なる老化現象ではなく、高血圧、動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病のサインである可能性がある。
  • これらの症状は、腎臓や膀胱だけでなく、全身の血管の健康状態を反映している。
  • スウェーデンの研究によると、夜間に3回以上トイレに起きる人は、2回以下の人に比べて死亡率が約2倍になるという衝撃的な事実がある。これは、夜間頻尿が命を縮める病気の兆候である場合が多いため。
  • 原因の一つとして、細胞の錆(酸化ストレス)が挙げられ、膀胱で生成される一酸化窒素が減少し、膀胱が硬くなることで夜間頻尿を引き起こす。
  • 糖尿病の疑いがある場合は、夜間の排尿回数だけでなく尿の量も増える傾向がある。
  • 腎臓機能の低下も頻尿や夜間頻尿の原因となり得る。腎臓は血液を濃縮できなくなるため、尿量が増加する。
  • 腎臓の健康を守るためには、腎臓を錆びさせないこと(抗老化)が重要であり、ストレス軽減、適度な運動、カロリー制限、体重管理、リンの過剰摂取を避けることが大切。

2. とりあえず食べてみて!頻尿、夜間頻尿、尿漏れを改善する魔法の食品

  • 排尿の悩みを改善するとして注目すべき栄養素は、アルギニンとシトルリンである。これらは体内で一酸化窒素の生成を助け、膀胱を柔軟に保ち、スムーズな排尿を促す。
  • アルギニンを多く含む食品:魚介類(エビ、ホタテ、イワシ、カツオ、サケ、サザエ、アジ)、肉類(鶏むね肉、豚ヒレ肉、牛もも肉、マトン、豚もも肉)、種子類(かぼちゃの種、落花生、ごま、松の実、アーモンド、えごま、カシューナッツ、くるみ、ひまわりの種)、豆類(高野豆腐、湯葉、大豆、納豆、豆乳、おから、空豆、ひよこ豆)。
  • シトルリンを多く含む食品:ウリ科の植物(スイカ、冬瓜、キュウリ)、特にスイカは豊富。
  • アルギニン食品とシトルリン食品を組み合わせることで、より効果が高まる(例:ゴーヤチャンプルー、スイカと豚肉の炒め物).
  • サプリメントや漢方薬の活用も有効であり、ノコギリヤシ(前立腺肥大)、ペポカボチャの種(頻尿、残尿感、過活動膀胱)、アルギニン・シトルリン(膀胱の柔軟性)、アスタキサンチン(抗酸化作用)、クルクミン(抗炎症作用)などが紹介されている。ただし、サプリメントはあくまで補助であり、生活習慣の見直しが最も重要。

3. 絶対にあそこを鍛えよ!1日3分で頻尿も尿漏れも改善する魔法の習慣

  • 頻尿や尿漏れがあるからと水分摂取を制限するのは逆効果であり、1日1.5〜2リットルを目安に摂取すべき。水分不足は血流悪化や有害物質の排出を妨げる.
  • 膀胱の筋肉を意識的に動かすことはできないが、下腹部を動かすことで間接的に刺激し、機能改善が期待できる.
  • 効果的なトレーニング:
    • 肛門エクササイズ: 座ったまま肛門を5秒ほど閉めて緩めるのを10回繰り返す。
    • 尿道エクササイズ: 排尿時に数秒間我慢する。
    • スクワット: 下半身を鍛え、排尿に関わる筋肉も刺激する。
    • 骨盤底筋体操: 仰向けで膝を立て、肛門や尿道を締めるように力を入れ、10秒ほどキープして緩めるのを繰り返す。座った状態や立った状態でも可能。
    • プランク: うつ伏せで肘とつま先で体を支え、体幹を鍛えることで下腹部の筋肉にも働きかける。
  • 軽い全身運動も尿トラブルの改善に有効であり、高齢者向けの運動教室の研究で、頻尿や残尿感などが軽減したことが示されている。
  • 特に推奨されるのはウォーキングであり、肥満予防、足腰強化、心肺機能向上、ストレス解消など多くの健康効果に加え、排尿に関わる筋肉のストレッチにも繋がる。

腎臓と膀胱を死ぬまで守る黄金ルール:血管を若々しく保つこと

  • 活性酸素は血管を劣化させ、腎臓や膀胱の機能低下に繋がる。
  • 血管が劣化し始める年齢の目安は、男性が42歳、女性が52歳。男性の場合、朝の勃起現象が血管の柔軟性の目安となる。
  • 血管を若く保つためには、酸化ストレスを減らすことが重要であり、ストレスを溜めない、食べ過ぎや早食いを避ける、抗酸化作用のある食品(ポリフェノール、フラボノイドが豊富な食品)を積極的に摂取する。
  • 塩分と糖質の摂取量に注意し、過剰摂取は腎臓に負担をかけ、高血圧や腎臓病のリスクを高める。
  • 適度な脂質摂取は必要。
  • 抗酸化物質を多く含む食品を摂取し、塩分と糖質を控えめにする生活習慣が、腎臓と膀胱を守る上で重要。

レビュー

カデレオ
カデレオ

尿活トレーニング

2020年に『寿命の9割は「尿」で決まる』を上梓された堀江重郎医師の新刊で、もし、どちらか1冊のみということであれば新しいこちらを読めばいいと思いますが、両著で内容が異なります。『寿命の9割は「尿」で決まる』のほうは頻尿の話からスタートして、緊張するとトイレに行きたくなるのはなぜか? といったトピックをはさみつつ、尿漏れや失禁、そして前立腺肥大の話へと展開していきます。対する本書は『尿で寿命は決まる』というタイトルこそ酷似するものの、表紙に載っている「泌尿器の名医が教える 腎臓・膀胱 最高の強化法」という言葉からも分かるように、後半は「尿活トレーニング」の話になっていきます。運動や食事について。
健康のために食事や運動を気にする、心がけるのは当たり前ですが、下腹部を動かすことで間接的に膀胱の筋肉をストレッチすることが可能だから、そのために具体的にどういう運動をすべきか、どういう食材を摂るべきか、逆にどういう食事は避けるべきか。
前半は、緊張するとトイレに行きたくなるのはなぜか? というトピックこそ『寿命の9割は「尿」で決まる』と同じですが、頻尿や血尿の話、尿が泡立つからといって過度に心配する必要はないことなどが書いてあります。もちろん前立腺肥大についても書いてあります。
同じところもある両著なのですが、『寿命の9割は「尿」で決まる』のほうは「気をつけないと早死にしてしまう!」という警告の本であるのに対して、この『寿命の9割は「尿」で決まる』は「こうやって健康的に長生きしよう!」という前向きな本になっています。

赤柴
赤柴

参考になりました。

健康診断で気になる数値が出始めたタイミングでお試しの機会をいただいたのでレビューします。
第二の「沈黙の臓器」といわれる腎臓やぼうこうについて詳しく書かれた本で読みやすかったです。
同じ先生の2018年に刊行された『寿命の9割は「尿」で決まる』を一部改編のうえ刊行したものだと
目次に書いてありました。

そういえばよく知らない腎臓やぼうこうの仕組みから
その不調がもたらす怖い病気、自分でできる対策などが書かれており
このタイミングで読んで良かったと思いました。
ややくどい感じもありましがた、それだけ先生が伝えたい大切なことと思っていらっしゃるのだと感じます。
残念ながら既に近い親族が腎不全で透析を受けており、
本人だけでなく周りのサポートの大変さなどを度々耳にしていましたので
自分ごととして今からできることは気をつけていきたいと思います。
偏りのない食事が大切だとのこと、少し手間はかかりますが
1年後の健康診断の結果が改善することを目標に取り組んでいこうと思いました。

目次は商品説明にも詳しく載っていますので、気になった方は一読をお勧めしたいと思います。
タイトルからしてなかなか書店では買いにくい本ですのでAmazonでの購入に向いていると思いました。

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