言語化することの大切さ

雑学

うまく言葉にできる人、つまり言語化できる人になるための方法をまとめました。

言いたいことをうまく言葉にできなかったり、伝えたいことがモヤモヤしてまとまらなかったり、説明している途中で話の方向性を見失ってしまう、といった悩みを抱えている方におすすめです。

言語化能力は才能ではなく、努力によって身につけられるスキルであり、学校では習わないこのスキルを身につけることで、周囲と圧倒的な差をつけることができます。

そもそも言語化能力とは?

辞書によると、言語化とは「感情や思考など、言葉になっていないものを言葉で表現すること」です。これは、短くインパクトのあるキャッチコピーを作るだけでなく、誰かに自分の考えを伝えたり、自分自身で気持ちを整理したりすること も含みます。つまり、言語化能力とは、自分の頭の中にあるものを言葉にして相手に届ける力です。ハーバード大学のジェラルド・ザルトマン教授によれば、人間が持っている感覚のうち、言語化できているのはわずか5%に過ぎないそうです。残りの95%の感覚は、「なんとなくそう思う」というレベルでしか認識されていないのです。例えば、カフェで落ち着くのは、音楽、照明、椅子の座り心地、コーヒーの香りなど、様々な要素が影響しているかもしれませんが、普段そこまで細かく言葉にして認識することはありません。このように、私たちは普段、言葉にならない感覚に囲まれて生きています。せっかく実力があっても、それを言葉にできなければ相手に伝えることはできません。逆に、自分の感覚を言語化できるようになれば、同じ実力でも数倍の価値に見えることさえあります。これは、魅力が正しく伝わり、相手に分かりやすく届き、共感を引き出せるようになるからです。

言語化力の3つのフェーズ

私たちが言語化を難しいと感じるのは、小さい頃から自分の気持ちを言葉にして伝えるトレーニングをほとんどしてこなかったからです。むしろ、日本では「空気を読む」文化が根強く、言葉にしないことが美徳とされてきた背景さえあります。そのため、伝えたいことを言葉にするのが苦手なのはある意味当然なのです。だからこそ、ここを意識して鍛えるだけで周りと圧倒的な差がつきます。言語化力を高めるためには、以下の3つのフェーズを順番に鍛えていくことが重要です。

フェーズ1:自分の中に考えを浮かばせる

言語化の最初のフェーズは、自分の考えを浮かばせることです。ここで最も大切なのは、自分の中にある感情や思考にちゃんと気づくことです。これは意外と難しく、「なんとなくイライラする」「よくわからないけどモヤモヤする」のように、感じてはいるものの、何が原因か自分でもはっきり分かっていないことが非常に多いのです。この「なんとなく」をそのままにしておくと、考えが整理されないだけでなく、誰かに伝えようとしたときに言葉に詰まってしまいます。つまり、言語化の最初のつまずきは、自分が何を感じているのかに気づけていないことなのです。

この力を身につけるためのおすすめのトレーニング方法として、「気持ちの実況メモ」を取ることが紹介されています。例えば、「今資料作りをしていてちょっと焦りを感じた」「ランチで〇〇を食べてすごく幸せな気持ちになった」のように、感じたことを短い言葉にして書き止めます。できればノートやスマホにできるだけリアルタイムで書くのがコツです。後から思い出して書こうとすると、その時感じたリアルな気持ちがぼやけたり、無意識に綺麗な言葉に整えてしまったりする可能性があるからです。最初はうまく言葉にできなくても大丈夫で、大事なのは「今のこの瞬間の自分」の感情や思考をキャッチすることです。これが言語化の最初の一歩であり、この力を鍛えることが次の「言葉にまとめる力」につながっていきます。

フェーズ2:考えを具体的な言葉にしてまとめる

言語化の第2フェーズは、考えを具体的な言葉にしてまとめることです。フェーズ1でキャッチした「なんとなくモヤモヤしていた感情」を、ここで整理して具体的な言葉にしていくステップに入ります。多くの人は感じたことをそのまま放置してしまうため、「気持ちだけはあるけど言葉にならない、結果誰にも伝わらない」ということが起こっています。フェーズ2でやるべきことは、自分の感情や思考をできるだけ輪郭のある言葉にすることです。

このフェーズで役立つ3つの重要なテクニックがあります。

  1. 「なぜ」を繰り返して自分に問いかけることです。例えば、上司に「助かったよ」と言われて嬉しかったと感じた時に、なぜ嬉しかったのか?(自分の頑張りを認めてもらえた気がしたから)、なぜ認められると嬉しいのか?(普段なかなか評価される機会が少ないから)、なぜ評価を求めてしまうのか?(自分の存在が役に立っていると実感したいから) のように、「なぜ」を繰り返して深掘りしていきます。このように「なぜ」を追求することで、最初は単なる嬉しさだった感情が、「自分の存在意義を感じられる瞬間が欲しかった」というより具体 的で深い言葉へと掘り下げられます。
  2. 5W3Hを使って言葉を具体化することです。Who(誰が)、When(いつ)、Where(どこで)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)、How much(いくらで)、How many(どのくらい)を意識することで、曖昧な言葉を具体的で分かりやすい言葉に変えることができます。例えば、「プレゼン準備が大変だった」という一言も、5W3Hで整理すると、「私と営業チームで(Who)、今週の水曜日に(When)、本社会議室で(Where)、新商品の提案プレゼンを(What)、新規クライアント獲得に向けた重要なものだから(Why)、役割分担してスライドを30枚以上作成し(How)、3日間で10個以上のタスクをこなして(How many)」のように、どれだけ準備に力を入れたかが相手にリアルに伝わるようになります。
  3. ノートに書き出して整理することです。頭の中だけで考えようとすると思考が堂々巡りしてしまいがちです。そのため、A4サイズくらいの紙に一度書き出してみることで、感情や思考を一度外に出して俯瞰できるようになります。特に紙のノートを使うのがおすすめで、これは手を動かして書くことで思考のスピードが少し落ち、言葉を丁寧に選ぶ習慣が自然と身につくからです。

これらの3つのテクニックを意識して鍛えれば、モヤモヤした感情をしっかり言葉にできるようになります。

フェーズ3:考えを相手に伝える

言語化の第3フェーズは、考えを相手に伝えることです。ここまでのステップで、自分の感情や思考をキャッチし、言葉にまとめることができましたが、言葉がまとまっただけではまだ「伝わった」とは言えません。大事なのは、相手にとって分かりやすい形に変換して届けることです。

相手に伝わりやすくするためのポイントがいくつかあります。

  • できるだけ固有名詞や具体的な数字を使うことです。例えば、「この施策は効果がありそうです」だけでは漠然としていますが、「この施策は試験導入したAチームで業務効率が20%改善しました」と伝えれば説得力が増します。
  • 例え話や比喩を使うことも有効です。職場の同僚に今のプロジェクトの忙しさを聞かれた時に、「夏休み最終日に宿題全部やろうとしてる感覚」と言えば、聞き手に大変さが一発で伝わります。

また、伝える上で意識しておきたい重要な点があります。それは、自分の中で言語化できたとしても、それが受け手にそのまま伝わるとは限らないということです。例えば、「早めにこのタスクを終わらせたい」と思い、「早めに取り掛かってください」とお願いした際に、自分が「今日中」をイメージしていても、相手は「今週中」だと解釈してしまうかもしれません。このように曖昧な表現を使うと、認識のずれが生まれてしまいます。だからこそ、数字や時間をはっきりさせる、具体的な期限を伝える といった意識が、相手に伝わる言語化には非常に重要です。重要なのは「伝えたか」ではなく「伝わったか」どうかです。「今の説明で相手は本当にイメージできただろうか?」と一度自分に問いかけるだけで、伝え方の精度はどんどん上がっていきます。人の心を動かし、行動を変える言葉は、整理されていて分かりやすく、具体的である ということを覚えておきましょう。

言語化を鍛える上でのよくある落とし穴

言語化を鍛える過程で陥りやすい落とし穴が3つあります。

  1. 語彙力を増やすだけで言語化がうまくなると考えてしまうことです。語彙力を高めることは非常に大切ですが、それだけで言語化力が上がるわけではありません。大切なのは、**増やした言葉を「どう使うか」**です。場面に合った言葉を選び、相手に分かりやすく届ける力を磨いてこそ、語彙が本当の意味で生きてきます。
  2. 曖昧な表現で済ませてしまうことです。これはフェーズ3でも触れましたが、非常に重要です。「できるだけ早くお願い」と頼んでも、相手にとっての「早く」が今日中なのか今週中なのか分からず、ずれが生じる可能性があります。これを防ぐためには、具体的な期限や基準をはっきり伝えることが不可欠です。
  3. 相手も分かっている前提で勝手に話を進めてしまうことです。自分の中ではしっかり言語化できたつもりでも、それが相手にそのまま伝わっているとは限りません。にもかかわらず、「伝わっているだろう」と思い込んで確認せず話を進め、さらに専門用語や難しい表現を並べてしまうと、ますます伝わりにくくなります。だからこそ、相手が本当に理解できているかを常に意識しながら伝えることが、言語化力を磨く上で非常に重要です。

まとめ

言語化力を鍛えるための3つのフェーズ(考えを浮かばせる、言葉にまとめる、相手に伝える)と、よくある落とし穴について見てきました。

  • フェーズ1では、気持ちの実況メモなどを通して、自分が何を感じているかに気づく力を鍛えることが大切です。
  • フェーズ2では、「なぜ」を繰り返し問いかけたり、5W3Hなどを使ったりしながら、思考を深め、考えを具体的な言葉に整理することがポイントです。
  • フェーズ3では、固有名詞や例え話を用い、曖昧さをなくして相手視点で言葉を選ぶことが重要です。 よくある落とし穴としては、語彙力だけでは不十分なこと、曖昧な表現を避けること、そして相手の理解度を常に意識すること が挙げられました。

知識を増やすだけでは言語化力は身につかない という点があります。結局は、自分で言葉を作り出し、アウトプットしていくしかありません。普段の生活で自然に伸びるスキルでもないため、英語の勉強のように、言語化力を鍛えるための時間を意識的に作ることが大切です。具体的には、毎日数分でも気持ちの実況メモを取る、小さなことでも「なぜ」を自分に問いかけて深掘りする、といった日々の小さな積み重ねが、確実に言語化力を育てていくのです。言語化力は一生使えるスキルですので、今日から小さなアウトプットを始めてみてはいかがでしょうか。

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