神社・大社・神宮・宮の違いとは?

雑学

明治維新以前には「社号」についての決まりは特になかったが、明治維新後に神社が国の管理下に入ると、「神宮」や「大社」などの社号を名乗ることに国の公認が必要になった。第二次世界大戦後は「政教分離」により、神社は国の管理を外れたことにより、自由に名称を名乗れるようになった。

  • 【神社】最も一般的な社号で且つ神社の総称。特に基準はなし
  • 【大社】稲荷神社の様に特定の神を祭神とした神社グループの「本社」
  • 【神宮】皇室の祖神や歴代天皇、皇室と縁の深い神を祭神とする神社
  • 【宮】嫡男系の皇孫を祭神とする神社。東照宮の様な例外も多数ある

社号と社格は同じではない点に注意

神宮や大社などの名前がついた神社は格式が高そうであるのは間違いないですし、歴史的に見てもそのような傾向があります。

しかし、社格という制度時代は第二次世界大戦の終わりのときにGHQによって神社と国の分離をすることになっており、現在社格制度は廃止されている状態にあります。

そのため、現在で社格の参考にされているのは、平安時代に作られた「延喜式」に記載されているかどうか(式内社という)や、明治時代に制定された「官社」などを「旧官幣社」「旧国幣社」などと昔の社格が使われている。実際に神社にお参りすると神社の名前が入った石が置かれていると思いますが、ここに昔の社格が彫られていることがあります。是非ごらんになってください。

皇室の祖先神・歴代の天皇・神器をまつる「神宮」全24社

社号の神宮は非常に特別で、この名前がついた神社は特に歴代の天皇や皇室とのかかわりが強い神社につけられる社号です。日本の中心となる神様のルーツとなるため、格式が高い神社につけられています。神宮号を付けられている神社の例としては以下があります。

社名住所ご祭神
伊勢神宮三重県伊勢市宇治館町1天照大神・豊受大神とようけおおみかみ
伊弉諾いざなぎ神宮兵庫県淡路市多賀740伊弉諾尊いざなぎのみこと伊弉冉尊いざなみのみこと
霧島神宮鹿児島県霧島市霧島田口2608−5天饒石国饒石天津日高彦火瓊瓊杵尊あめにぎしくににぎしあまつひたかひこほのににぎのみこと
鹿児島神宮鹿児島県霧島市隼人町内2496−1天津日高彦穂々出見命あまつひこひこほほでみのみこと
鵜戸うど神宮宮崎県日南市大字宮浦3232日子波瀲武鸕鶿葺不合尊ひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと
英彦山神宮福岡県田川郡添田町英彦山1正哉吾哉勝速日天忍穂耳尊まさかあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと
橿原かしはら神宮奈良県橿原市久米町934神武天皇(日本の初代天皇)
宮崎神宮宮崎県宮崎市神宮2丁目4−1神武天皇(日本の初代天皇)
氣比神宮福井県敦賀市曙町11−68伊奢沙別命いざさわけのみこと・仲哀天皇
宇佐神宮大分県宇佐市南宇佐2859応神天皇・神功皇后じんぐうこうごう
近江神宮滋賀県大津市神宮町1-1天智天皇
白峯しらみね神宮京都府京都市上京区飛鳥井町261崇徳天皇・淳仁天皇
平安神宮京都府京都市左京区岡崎西天王町桓武天皇・孝明天皇
赤間神宮山口県下関市阿弥陀寺町4−1安徳天皇
水無瀬みなせ神宮大阪府三島郡島本町広瀬3丁目10−24後鳥羽天皇・土御門つちみかど天皇・順徳天皇
吉野神宮奈良県吉野郡吉野町吉野山3226後醍醐ごだいご天皇
北海道神宮北海道札幌市中央区宮ケ丘474明治天皇
明治神宮東京都渋谷区代々木神園町1−1明治天皇
熱田あつた神宮愛知県名古屋市熱田区神宮1丁目1−1草薙神剣くさなぎのみつるぎ
石上いそのかみ神宮奈良県天理市布留町384布都御魂ふつのみたま
國懸くにかかす神宮和歌山県和歌山市秋月365日矛鏡ひぼこのかがみ
日前ひのくま神宮和歌山県和歌山市秋月365日像鏡ひがたのかがみ
鹿島神宮茨城県鹿嶋市宮中2306−1武甕槌神たけみかづちのかみ
香取神宮千葉県香取市香取1697−1経津主神ふつぬしのかみ

同名神社の総本社「大社」

大社とは戦前までは出雲大社にだけ使われていた社号。現在では全国に信仰の広がる総本社やそれに並ぶ影響力の大きな神社に使われていることが多い。明治時代の社各制度で「官幣大社」「国幣大社」の社格が与えられていた神社が、戦後に大社と名前を変更するケースが多い。

社名ご祭神
出雲大社いずもおおやしろ島根県出雲市大社町杵築東195大国主大神
熊野大社島根県松江市八雲町熊野2451熊野大神櫛御気野命くまののおおかみくしみけぬのみこと
三嶋大社静岡県三島市大宮町2丁目1−5大山祇命おおやまつみのみこと積羽八重事代主神つみはやえことしろぬしのかみ
富士山本宮浅間大社ふじさんほんぐうせんげんたいしゃ静岡県富士宮市宮町1−1木花之佐久夜毘売命このはなのさくやびめのみこと
諏訪大社長野県諏訪市中洲宮山1建御名方神たけみなかたのかみ八坂刀売神やさかとめのかみ
気多大社けたたいしゃ石川県羽咋市寺家町ク1−1大己貴命おおなむちのみこと
南宮大社岐阜県不破郡垂井町宮代1734−1金山彦命
多度大社たどたいしゃ三重県桑名市多度町多度1681天津彦根命あまつひこねのみこと
多賀大社滋賀県犬上郡多賀町多賀604伊邪那岐命いざなぎのみこと伊邪那美命いざなみのみこと
建部大社たけべたいしゃ滋賀県大津市神領1丁目16−1日本武尊やまとたけるのみこと大己貴命おおなむちのみこと
日吉大社滋賀県大津市坂本5丁目1−1大己貴神おおなむちのかみ大山咋神おおやまくいのかみ
春日大社奈良県奈良市春日野町160春日神
龍田たつた大社奈良県生駒郡三郷町立野南1丁目29−1天御柱命あめのみはしらのみこと国御柱命くにのみはしらのみこと
廣瀬大社奈良県北葛城郡河合町川合99若宇加能売命わかうかのめのみこと
伏見稲荷大社京都府京都市伏見区深草藪之内町68稲荷大神
松尾大社京都府京都市西京区嵐山宮町3大山咋神おおやまくいのかみ・中津島姫命
梅宮大社京都府京都市右京区梅津フケノ川町30酒解神・酒解子神・大若子神・小若子神
住吉大社大阪府大阪市住吉区住吉2丁目9−89底筒男命・中筒男命・表筒男命・神功皇后
大鳥大社大阪府堺市西区鳳北町1丁1−2日本武尊・大鳥連祖神おおとりのむらじのみおやのかみ
熊野本宮大社和歌山県田辺市本宮町本宮1110家都美御子大神けつみみこのおおかみ
熊野速玉大社和歌山県新宮市新宮1番地熊野速玉大神・熊野夫須美大神
熊野那智大社和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山1熊野夫須美大神
宗像大社むなかたたいしゃ福岡県宗像市田島2331田心姫神たごりひめのかみ湍津姫神たぎつひめのかみ市杵島姫神いちきしまひめのかみ
高良大社こうらたいしゃ福岡県久留米市御井町1高良玉垂命こうらたまたれのみこと・八幡大神・住吉大神

皇室に関係する神様をまつる「宮(ぐう・みや)」

社号の「宮」は神宮と同じ意味で用いられており、天皇や親王などの皇族を祀る神社に付けられている。また、皇族以外でも天満宮など皇族でなくとも政権に関わった数少ない神様にも宮の社号が付けられている。菅原道真を祀る天満宮と徳川家康の東照宮が有名です。

神社の系列

祭神と神社名を共有する神社の系列は、それぞれの「大社」を頂点とする24グループだけではありません。また、分社(系列内の同名神社)の数が多いグループもあれば、そうでないグループもあり様々です。以下に分社数が多いグループのベスト10をご紹介します。

系統本源神社分社の名称神社数
八幡宇佐神宮八幡神社7,817
 伊勢 伊勢神宮 神明神社
天祖神社
4,425
天神北野天満宮
太宰府天満宮
北野神社
菅原神社
3,953
稲荷伏見稲荷大社稲荷神社2,970
熊野熊野本宮大社
熊野速玉大社
熊野那智大社
熊野神社2,693
諏訪諏訪大社諏訪神社2,616
祇園八坂神社八坂神社2,299
白山白山神社白山神社1,893
日吉日枝大社
松尾大社
日枝神社
松尾神社
1,724
春日春日大社春日神社1,072

以上は神社本庁の「全国神社祭祀祭礼総合調査」などのデータを参考にしたランキングですが、他の集計方法で以下のようなランキングも報告されています。ベスト3のみご紹介します。

系統本源神社分社の名称神社数
稲荷伏見稲荷大社稲荷神社32,000
八幡宇佐神宮八幡神社25,000
伊勢伊勢神宮神明神社
天祖神社
18,000

八幡宮(はちまんぐう)

「八幡宮」は、武運の神とされる八幡神(はちまんしん・やはたのかみ)を御祭神(ごさいじん・祀られている神様)とする神社のことです。

  • 応神天皇(おうじんてんのう・第15代天皇)
  • 比売神(ひめがみ・神道の女神のこと)
  • 神功皇后(じんぐうこうごう・応神天皇の母)

「八幡宮」は全国に約44,000社あるとされ、大分県宇佐市にある宇佐神宮が総本社で、通称「宇佐八幡」と呼ばれています。

725年に創建された宇佐神宮は、八幡宮の起源となったといわれており、伊勢神宮に次ぐ第二の宗廟(そうびょう・皇室の祖先神を祀ったやしろ)として、奈良時代(710年~794年)から皇室の崇敬を受けてきました。

八幡神社、八幡社、八幡さまと呼ぶこともあります。

明神(みょうじん)

もともと日本に神道がありましたが、仏教が伝来した後、神仏習合によって神社とお寺が同じ敷地内に作られたり、神道の神様と仏教の仏が一緒に祀られるようになりました。

その際、もともと神様として祀られていたご祭神に崇敬(すうけい・心から尊敬すること)の意を表して、神名の下に「明神」とつけるようになったようです。

神道の神様を排除したり、蔑(ないがし)ろにして争いを生ないように仏教を広めるため、「明神」と尊称をつけて呼んだようです。

特に崇敬される神様は「大明神」と呼ばれることもありますが、同じ神様でも「明神」「大明神」の両方の呼び方があったりと、呼び方に明確な基準はありません。

たとえば、豊臣秀吉は亡くなったあとに「豊国大明神」という神号を与えられました。

また、稲荷神に尊称として付けて「稲荷明神」「稲荷大明神」という風に呼びます。

天満宮(てんまんぐう)

「天満宮」は、学問の神である菅原道真を御祭神とする神社のことです。

道真は仕事ができ、異例のスピードで出世していくのですが、それを良く思わなかった人たちによって、京から太宰府へ左遷され、亡くなったといわれています。

天変地異は道真の祟りと言われ、雷の神である「天神」と道真を関連付けて考えるようになり、京都に北野天満宮を建立して道真を鎮めようとしました。

東照宮(とうしょうぐう)

「東照宮」は、徳川家康を御祭神とする神社のことです。

家康は、江戸幕府の初代将軍で、1616年6月に駿府城(現在の静岡県静岡市)で亡くなりました。

家康の遺言に従って、ご遺体は久能山(静岡県静岡市)に運ばれ、東照社(現在の久能山東照宮)が建立され、家康は「東照大権現」の神号を与えられ神格化されました。

江戸幕府は、日光(栃木県日光市)にも東照社を建立し、家康の一周忌に、久能山から日光(栃木県日光市)にご遺体を移したといわれておりますが、ご遺体を移したのではなく分霊(ぶんれい・神社の祭神の霊をほかに分けて祀ること)したという説もあります。

1645年に天皇の命(めい)により、「東照宮」と名乗るようになりました。

東照宮の総本山は日光東照宮です。

参考

神社と神宮・大社の違いは何?名称にランクはあるの?違いをわかりやすく解説!
神社には何故いろいろな呼び名があるのか、それぞれの違いはどこにあるのか、この記事では、そんな「神社の名称」について疑問を解決していきます。

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