ロシア(および前身の国家)とウクライナの関係を1700年代から現代に至るまで、侵略・紛争に至る歴史的背景を時系列で整理します。地政学的要因と民族意識の形成に焦点を当てた分析を含み、アメリカによるウクライナへの関与を時系列で整理しました。
- 18世紀ロシア帝国の拡大とウクライナ併合
- 1700-1721年大北方戦争
- ピョートル1世がスウェーデンからバルト海進出を達成。ウクライナ・コサックの指導者イヴァン・マゼーパがスウェーデン側につくが敗北
- 影響:ウクライナの自治権縮小開始。ロシアによる「小ロシア(ウクライナ)」同化政策が加速
- 1764年コサック国家の解体
エカチェリーナ2世がザポロージャ・シーチ(コサック自治組織)を廃止
- 1783年クリミア・ハン国を併合
黒海艦隊基地・セヴァストポリ建設開始
- 19世紀民族意識の萌芽と弾圧
- 1840年代タラス・シェフチェンコの台頭
- ウクライナ民族詩人がロシア帝国批判の詩を発表
- ロシア化政策:ウクライナ語教育禁止、正教会支配強化
- 1861年農奴解放令後の土地収奪
ウクライナ肥沃地帯(「ヨーロッパの穀倉地帯」)をロシア貴族が支配。ウクライナ農民の大規模移住(シベリア・カザフスタン)が強制。
- 1876年エムス勅令発布
ウクライナ語書籍の出版禁止令(エムス勅令)発布
- 20世紀ソ連時代の抑圧と悲劇
- 1917-1921年ロシア革命とウクライナ独立闘争
- 1918年:ウクライナ人民共和国が独立宣言。ボリシェヴィキとの戦争(ウクライナ・ソビエト戦争)で敗北
- 1922年:ソ連構成共和国としてウクライナ社会主義ソビエト共和国が発足
- 1932-1933年ホロドモール(人工大飢饉)
スターリンが農業集団化を強制。ウクライナ人農民の抵抗を潰すため、700万人以上が餓死。現在ウクライナは「ジェノサイド」と認定
- 1941-1944年ナチス占領期の分断
ウクライナ民族主義者組織(OUN)が独立を目指しナチスと一時協力。戦後、ソ連が西ウクライナを併合。
- 1944年クリミア・タタール人強制追放
クリミア・タタール人強制追放(スターリン命令)
- 1954年クリミア移管
フルシチョフがクリミア半島をウクライナSSRに「友好の印」として移管。後の紛争の伏線に
- 冷戦後独立とロシアの影響力維持
- 1991年ウクライナ独立
ソ連崩壊で独立。核兵器放棄と引き換えにロシア・米国・英国が「領土保全」を保証(ブダペスト覚書)
アメリカはウクライナの独立を承認し、外交関係を樹立。ウクライナが保有する核兵器の放棄を促し、1994年にブダペスト覚書を締結。ロシア・アメリカ・英国がウクライナの「領土保全」を保証した
核拡散防止とロシアの影響力抑制が目的
ウクライナは当時世界第3位の核保有国だった - 2004年オレンジ革命
親露派ヤヌコーヴィチの選挙不正に抗議。親欧米派ユシチェンコ政権誕生。ロシアがガス供給停止で圧力
- アメリカはNGOやメディアを通じて民主化支援を実施し、親欧米派ユシチェンコ政権の誕生を後押しした
- ウクライナのEU・NATO接近が加速し、ロシアとの対立が深まる。
- 2010年ヤヌコーヴィチ政権の親露路線
マイダン革命発生
ロシアがクリミア侵収を開始(2014年2月) - 2013年EUとの連合協定締結破棄
EUとの連合協定締結を直前で破棄
- 2014年以降侵略の本格化
- 2014年3月クリミア併合
「住民投票」を口実にロシアが軍事占領
国際社会の93%が非承認(国連総会決議68/262) - 2014年4月ドンバス戦争勃発
ロシアが東部ドネツク・ルハンスクで親露派武装勢力を支援。2022年までに14,000人以上が死亡
オバマ政権が15億ドル規模の軍事支援を開始。兵器供与(対戦車ミサイル「ジャベリン」含む)や兵士訓練を実施
ウクライナ軍の近代化を通じ、ロシアの拡張主義を牽制NATO東方拡大の一環として位置づけられた
- 2016年米大統領選挙とウクライナ疑惑
トランプ陣営の選対本部長ポール・マナフォートが、ウクライナの親露派政党から資金提供を受けた疑いが浮上。マナフォートは辞任し、後に脱税罪で収監される。トランプ政権がウクライナへの不信感を強め、軍事援助の一時停止(2019年)につながる伏線に
- 2019年トランプ政権の「条件付き援助」
- トランプ大統領がウクライナへの3億9100万ドルの軍事援助を一時凍結。バイデン前副大統領の息子・ハンター氏のウクライナ企業関与調査を条件にした「交換条件」が発覚し、弾劾調査が開始される
- ウクライナ政府が米国内政に巻き込まれ、ゼレンスキー大統領が「圧力を感じなかった」と弁明する事態に
- 汚職と経済低迷に苦しむ国民の不満が蓄積し既存政治家への不信が頂点に達しテレビドラマ『国民の僕』で「腐敗政治を打破する教師役」を演じ、国民の共感を獲得し政治経験ゼロのコメディアンであるゼレンスキー氏が大統領に当選
- 2022年2月全面侵攻開始
プーチンが「ウクライナの非ナチ化」を口実に全面侵攻。キーウ包囲、マリウポリ殲滅戦が発生
バイデン政権が武器供与・情報協力・経済制裁を強化。2023年までに総額440億ドル以上の支援を実施(HIMARS多連装ロケットシステムなど)
ウクライナのNATO加盟を事実上支持し、ロシアの「緩衝地帯」構想を否定
- 2024年NATO加盟推進と地政学的駆け引き
- NATO首脳会議でウクライナの加盟プロセス加速化が合意。ロシアは「安全保障上の脅威」と反発し、ジョージア駐留軍の撤退をちらつかせるなど複雑な駆け引きが発生
- ウクライナ戦争の長期化を防ぐため、欧米の結束維持が優先された
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