「ラッセル幸福論」の書評・要約

読書

バートランド・ラッセルの『幸福論』は、幸福は内面の充実と外部との調和の中に見出されるものであり、自己中心的な欲望を克服し、健全な人間関係や絶え間ない学び、社会への貢献を通じて実現されると説いています。不幸の原因は、多くの場合、外部からの無意味なプレッシャーや内面的な虚無感に起因し、これを乗り越えるためには、自己反省と積極的な行動が不可欠です。私たちが本当に幸福になりたいなら、外見的な成功や物質的な豊かさだけではなく、内面的な成長と人間関係の質の向上に注力することが求められるのです。

ラッセルの幸福論は、現代の混沌とした社会にあって、真の幸福を追求するための道しるべとなっています。彼の提言は、自己改善と他者との調和を重視する生き方の重要性を示しており、多くの人々にとって、より良い人生を築くためのヒントとなるでしょう。

不幸の根源

ラッセルは、現代社会における多くの不幸や不安感は、自己中心的かつ無意味な欲望、そして他者との比較や社会的プレッシャーに由来すると論じます。例えば、人々はしばしば虚栄や成功への渇望にとらわれ、本当に大切なものを見失ってしまいます。無駄な競争や、承認欲求に翻弄される結果、精神的なストレスや不安、孤独感が増大するのです。また、過度な私生活の充実や外部評価への依存が、内面の矛盾や不調和を招き、結果として幸福感を低下させる要因となっています。

  • 自己没入
    「自己憐憫」「罪悪感」「虚栄心」に囚われると、精神が内側に向き不幸になる。
    「他人の目を気にしすぎることは、人生の自由を奪う檻である」と指摘。
  • 比較の罠
    他人との比較(収入・容姿・社会的地位)は幸福を破壊する。
    「競争社会が生む嫉妬は、勝利者ですら心を蝕む」と警鐘。
  • 受動的姿勢
    テレビや娯楽に依存する「受け身の生活」は空虚感を生む。
    「真の幸福は能動的な創造から生まれる」と説く。

幸福を追求するための方策

ラッセルは、幸福の探求には自らの行動や思考の見直しが不可欠であると述べています。彼の提案する具体的な方策には、以下のようなものがあります。

  1. 内省と自制
     自己の欲望を客観的に見つめ直し、不必要な物質主義や虚栄心を制御することが大切です。内省することで、本当に必要なものや大切な信念に気づき、心に余裕をもたせることができます。
  2. 好奇心と学びへの積極性
     人生に充実感をもたらすためには、絶えず新しい知識や経験を求める好奇心が必要です。学びや創造的な活動を楽しむことで、自己実現が図れ、内面的な満足感が得られます。
  3. 健全な人間関係の構築
     社会的な絆や友情、家族とのつながりは、幸福の大きな源泉です。他者との誠実なコミュニケーションや協力が、心の安定と豊かさをもたらすとしています。
  4. 仕事や趣味との調和
     日々の職務や趣味を通じて、自身の能力を適切に発揮し、成果を感じることができれば、自尊心や自己効力感が高まり、幸福感に直結するという考えです。
  5. 社会全体への貢献
     自分だけの幸福だけでなく、他者やコミュニティへの貢献、すなわち利他的な行動も、結果として個人の幸福に寄与するとラッセルは説いています。互いに支え合う社会の中で生きることが、人間としての本来の充実感をもたらします。

幸福を獲得する方法

① 外界への興味を広げる

  • 自然観察・芸術鑑賞・学問探究など「自己を超えた対象」に没頭する
    「アリの行列に1時間見入れることができる者は、幸福への道を知っている」

② 建設的な仕事を持つ

  • 単なる労働ではなく「世界を少しでも良くする」という目的意識が重要
    「庭師の植物への愛情は、銀行家の金銭欲より豊かな喜びをもたらす」

③ 人間関係のバランス

  • 過度な依存や支配を避け「程よい距離感」を保つ
    「愛情は植物のように、締め付けすぎると枯れる」

④ 理性の訓練

  • 感情に流されず「事実を客観視する習慣」を養う
    「『なぜ自分だけが』という思考は、常に誤りである」

現代社会への提言

  • テクノロジーとの付き合い方
    「機械が時間を節約しても、その時間をどう使うかが問題だ」
    便利さより「何に時間を投資するか」が幸福を決める。
  • 教育の本質
    「テストの点数より、世界への好奇心を育むべき」
    子供に「なぜ空は青いか」と問わせる教育を推奨。
  • 資本主義の病理
    「消費主義は幸福の錯覚を生む。本当の豊かさは、持つことでなく在ることにある」

ラッセルの幸福定義

ラッセルは、幸福を感じるためには、自己中心的な欲望や不必要な不安を捨て、外界との調和を見出すことが不可欠だと主張します。個人が心の余裕を持ち、充実した人間関係や意味ある活動に従事することで、内面的な平和が生まれ、その結果として真の幸福が得られるという考えです。また、幸福とは内面の充実感や好奇心、学びや創造的な活動による自己実現によってもたらされるものであり、外部の環境や経済的な状況だけでは決して十分には説明できないとしています。

「幸福とは、深く広い興味によって
 自己の殻を破り、
 生命の流れと調和した状態である」

実践するポイント

  1. SNS比較疲れ → 「1日1つ新しい発見」で外界へ意識を向ける
  2. 仕事のストレス → 「小さな改善」に意義を見出すマインドセット
  3. 人間関係トラブル → 「共感≠同意」の境界線を明確に
  4. 不安対策 → 「最悪のシナリオを書く」客観化トレーニング

彼の思想の本質は「幸福は征服(努力)によって得られる」という動的な考え方にあります。

登録情報

寸法 ‏ : ‎ 1.21 x 10.5 x 14.8 cm
出版社 ‏ : ‎ 岩波書店 (1991/3/18)
発売日 ‏ : ‎ 1991/3/18
言語 ‏ : ‎ 日本語
文庫 ‏ : ‎ 304ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4003364937
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4003364932

レビュー

ななし
ななし

考えさせられる言葉が数多くあった。

幸福論について

【印象に残ったところ】

・権力欲や色欲にとりつかれると欲望が無限化し満足できなくなる。

→ヤリチンが一人の女の子に絞らず色々な女の子を抱いているのは満足ができていないからなのか?

人生が面白くなるには、望んでいる「いくつか」を獲得し、「いくつか」を捨てるとあったが、これをすることで欲望を飼い慣らすことができるのかなと思った。

近年、SNSなどで成功者のプライベートの一部を垣間見ることができるようになったが、そのせいで成功者と自分の生活を比べるようになってしまい、自分の人生が面白くないと感じる人が増えてしまっている。この問題を改善するには、自分の人生で望んでいるものはなにか?そして本当に成功者になれば幸せになれるのかを今一度自問する必要があると感じた。

幼い時に、正常な満足を得られないと不幸になってしまうとあったがこれには激しく同意する。私の母が、仕事終わりにいつもお菓子を食べているのでなぜそんなにお菓子をたべるのか?と聞いたことがあった。その質問に対し、母は「小さいときにお菓子を食べれなかったから」と答えた。私はこの時、幼い時の不幸は一生かけて取り返すのだなと思った。

恐竜たちは互いに殺しあって絶滅し知性ある冒険者が王国を受け継ぐとあったが、これはSNSでの承認欲求の行きつく先なのではないかと感じた。

インスタやツイッターなどでいいねを稼ぐために必死に写真を投稿している方たちが恐竜で、SNSをしていない方たちが知性ある冒険者と仮定した場合、どう考えても画面ではなく、今を生きている冒険者たちのほうが幸せに生きれるに決まってる。そんな冒険者に私はなりたいのでSNSの類には触れず自分の人生を謳歌していきたい。

上手にやろうが下手にやろうが宇宙でみたら大したことないとあるがこれは心配性の私を救ってくれた素晴らしい言葉だ。何かをする際にいつも失敗が頭に覆いかぶさるが、この言葉を聞いてから失敗に飲み込まれることがなくなった。最近は、どうせ俺の人生なんか宇宙にはなんにも影響ないし気楽にいことある種の悟りを開けるまでに達することができた。

災難が迫った時には、起こりうる事態はどんなものか真剣に考えてみるとあったが、先ほど同様この言葉も私を恐怖から救ってくれた。実際、最悪の場合でも宇宙的に重要性を持つものは何一つ存在しないのでこういった無駄な悩みから心を解放してくれたこの言葉に感謝を述べたい。

かしこい人の場合は、ほかの人がほかのものを持っているからといって自分の持っているものが楽しいものでなくなることはないとあったが、この言葉は私のルッキズムから解放してくれた。以前顔がタイプではない女性とお付き合いをしていたことがあり、その際にもっとかわいいあの子がよかったなと思うことがあった。

今思えば、浅ましすぎて笑えるが当時は、連れている女の子のかわいさで男のレベルが決まると思っていたので街中でかわいい女の子を連れている男を見るたびに、俺の彼女全然かわいくないと思ってしまっていた。お付き合いしていた女の子は、

顔はタイプではなかったが性格がよく一緒にいて心の底から楽しいと思える人だったので顔だけですべてを決めていた自分が情けない。

ななし
ななし

幸福と不幸の知恵

前半は不幸について、後半は幸福についての主張が展開されています。以下に本書で印象に残った箇所をいくつか記載します。(私により部分的に脚色されている。)

①退屈の対義語は楽しみではなく興奮だ。現代人はギャンブルや競争により退屈から逃れているが、本来目指すべきは、静かさの中で満たされるような自然との戯れなど原初的な雰囲気の中にあるものである。

②現代人は労働条件の改善により肉体的労働からは解放されつつあるが、一方で神経をすり減らしている。これにより、穏やかな快楽を楽しめなくなっている。このような場合、心配や不安が絡んでいることが多いが、最悪の場合を想定し、それが起きても宇宙に影響など無いと考えれば、癒すことができる。

③熱意こそが幸福と健康の源泉だ。熱意は愛されることにより促進される。

④不幸や疲れは、興味を持てないから生じる。趣味は広く多く持つと良い。不幸な人ほど、自己への興味が集中している。もっと外の世界に興味を持つと良い。

⑤幸福な人とは客観的な生き方ができ、自由な愛と広い興味を持った人である。

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