今回はインフレ時において高級時計(ロレックス、パテック・フィリップなど)の購入時の支払い方法を考えます。
高級腕時計をインフレ下で購入する際の最適な方法について、またインフレではない通常時との比較について、それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説します。
高級腕時計は単なる消費財ではなく、資産としての側面を持つため、経済状況によってその購入戦略は大きく変わります。
【インフレ下】での比較
インフレとは「モノの価値が上がり、お金の価値が下がる」状態です。時計の価格が上昇し、現金の価値が目減りしていく環境です。
1. 借金をして先に買う場合
メリット
- 資産価格の上昇に先行できる(最大のメリット) インフレ下では、ロレックスなどの人気モデルは定価改定や二次市場価格の上昇が頻繁に起こります。お金を貯めている間に、時計の価格が貯蓄ペースを上回って上昇してしまう可能性があります。借金をしてでも先に購入することで、将来の価格上昇前の値段で資産を確保できます。
- 借金の実質的な価値が目減りする インフレが進むと、お金の価値そのものが下がります。つまり、将来返済する1万円は、借りた現在の1万円よりも価値が低くなっています。これは、実質的に借金の負担が軽くなることを意味し、借り手にとっては有利に働きます。
- 手元の現金を温存できる インフレ時は経済が不安定になりがちです。ローンを組むことで、手元の現金を緊急時の備えや、時計以外の有望な投資(株式など)に回すことができます。
デメリット
- 金利負担が大きい インフレを抑制するために、世の中の金利は上昇する傾向にあります。そのため、ローンの金利が高く設定される可能性があり、総支払額が大幅に増加します。時計の価値上昇率がローンの金利を上回らなければ、結果的に損をします。
- 資産価値下落のリスク 「インフレ=時計の価値も上がる」という想定は確実ではありません。景気後退を伴うインフレ(スタグフレーション)など、経済状況が悪化すれば、高級腕時計の二次市場価格が下落するリスクもあります。その場合、価値が下がった資産と、金利の高い借金だけが残るという最悪の状況に陥ります。
- キャッシュフローの悪化と精神的負担 毎月の返済は、収入の増減にかかわらず固定費として家計を圧迫します。また、「借金をしてまで買った」という精神的な負担を感じる可能性もあります。
2. お金を貯めてから買う場合
メリット
- 金利負担がなく、総支払額を抑えられる ローン金利や手数料がかからないため、時計の価格以上に支払う必要がありません。最も確実で健全な購入方法です。
- 経済的・精神的な安心感 借金がないため、将来の経済状況の悪化や収入減に対する不安が少なくて済みます。精神的な負担なく、純粋に時計の所有を楽しむことができます。
- 衝動買いの抑制 お金を貯める期間は、その時計が本当に自分にとって必要なのかを冷静に考える冷却期間にもなります。
デメリット
- 現金の購買力が低下する(最大のデメリット) インフレ下では、銀行に預けているだけのお金の価値は日々目減りしていきます。例えば、年5%のインフレなら、100万円の価値は1年後には実質的に95万円になってしまいます。
- 時計の価格上昇に追いつけない 貯蓄している間に、目当ての時計の価格がインフレ率以上に高騰してしまうリスクがあります。結果として、貯まった頃には当初の予算では買えなくなっている可能性があります。
- 機会損失 貯蓄している現金を、インフレに強い他の資産(株式、投資信託など)に投資していれば、お金を増やせた可能性(機会損失)があります。
【インフレではない通常時(安定期・デフレ期)】での比較
インフレの心配がなく、モノやお金の価値が安定している、あるいはモノの価値が下がる(デフレ)環境です。
1. 借金をして先に買う場合
メリット
- 機会損失の回避 手元の現金を投資に回し、ローンの金利(通常時は比較的低い)を上回るリターンが期待できるのであれば、借金をして時計を買い、手元の現金は投資に使うという選択が合理的になる場合があります。
- すぐに所有できる満足感 価格変動リスクが少ないため、純粋に「早く手に入れたい」という欲求を満たすことができます。
デメリット
- 借金の実質的価値が目減りしない インフレ時とは逆に、借金の価値は時間と共に軽くなることはありません。デフレ時にはむしろ借金の実質的な負担は重くなります。
- 金利負担 低金利であっても、金利はゼロではありません。時計の価格以上の総支払額になることに変わりはありません。
- 資産価値下落のリスク インフレ時ほどではありませんが、モデルの人気や経済状況によっては二次市場価格が下落するリスクは常に存在します。
2. お金を貯めてから買う場合
メリット
- 総支払額を最も安く抑えられる(最大のメリット) 金利負担がないため、支払いは時計の価格のみです。最も安全かつ経済的な方法です。
- 借金のリスクから完全に解放される 経済的な安定と精神的な安心感を得られます。
- デフレ時には有利になる もし世の中がデフレ(モノの価値が下がる)であれば、貯蓄している現金の価値は上がり、時計の価格は下がる可能性があります。この場合、待つことが最も賢明な選択となります。
デメリット
- 機会損失 安定期には、貯蓄以外の投資で資産を増やせる可能性があります。現金を寝かせておくことは、その機会を失っていると考えることもできます。
- すぐに手に入らない 所有するまでの期間が長くなるという、貯蓄における普遍的なデメリットです。
結論と判断のポイント
どちらの方法が良いかは、経済状況だけでなく、以下の個人的な要因によっても大きく変わります。
- インフレ下では、金融理論上は「資産性の高い特定モデルに限り、低金利で借りられるなら、借金をして買う」という選択肢に合理性があります。しかし、これは非常にリスクの高い戦略であり、相場観と十分な知識が必要です。
- どのような経済状況であっても、最も安全で賢明な方法は「お金を貯めてから買う」ことです。これは、金利という余計なコストを払わず、経済的・精神的な安定を保ちながら、純粋に高級腕時計のある生活を楽しむための王道と言えるでしょう。
- 時計の資産性
- ロレックス、パテック・フィリップ、オーデマ・ピゲなどの特定人気モデルは、インフレに強く、価値が下がりにくい(むしろ上がりやすい)傾向があります。このような「資産性の高い」時計であれば、インフレ下で借金をしてでも先に買う戦略には一定の合理性があります。
- 一方で、流行性の高いファッションブランドの時計や、二次市場が確立していないモデルの場合、資産価値の上昇は期待しにくいため、借金をして買うリスクは非常に高くなります。
- ローン金利 vs インフレ率・資産価値上昇率
- 「ローンの金利 < (インフレ率+時計の価値上昇率)」という数式が成り立つと確信できるなら、借金は有利に働きます。しかし、これはあくまで予測であり、不確実性を伴います。
- ご自身の財務状況とリスク許容度
- 安定した収入、十分な貯蓄、他に借金がないなど、財務状況が健全であることが借金をする大前提です。毎月の返済が生活を圧迫するような状況は避けるべきです。
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