アルコール → 肝臓 → アセトアルデヒド → 酢酸 → 二酸化炭素と水に分解される過程で鉄の吸収や代謝にとって重要なビタミンB1、ナイアシン、亜鉛が消費される。
肉・魚のヘム鉄、野菜・果物の非ヘム鉄とサプリのキレート鉄の違いを表にまとめました。
特徴 | ヘム鉄 | 非ヘム鉄 | キレート鉄 |
---|---|---|---|
含有物 | 動物性 | 植物性 | 加工鉄 |
吸収率 | 高い 15〜25% | 低い 2〜5% | 非常に高い 20~40% |
含有食品 | 肉、魚 | 野菜、果物 | サプリメント |
胃腸への影響 | 少ない | 多い | 少ない |
吸収に影響する要因 | 影響されにくい | 食べ合わせに影響される | 影響されにくい |
特徴 | 鉄イオンが保護されている | 鉄イオンがむき出し | アミノ酸やクエン酸でキレート加工 |
デメリット | ・価格が高い ・ベジタリアン不向き | ・吸収率が低い ・胃腸障害のリスク | ・価格が高め ・製品によって差がある |
適している人 | ・吸収力が弱い人 ・胃腸が敏感な人 | ・コストを抑えたい人 ・軽度の不足 | ・吸収効率を重視する人 ・継続派 |
ヘム鉄は肉や魚に多く含まれ、吸収率が高く、胃腸への負担が少ないのが特徴です。非ヘム鉄は野菜や果物に含まれ、吸収率が低く、食べ合わせによって吸収率が変わることがあります。キレート鉄はサプリメントに含まれ、吸収率が非常に高く、胃腸への負担が少ないのが特徴です。
鉄分の含有量が多い順に並べた表です。
レバーは鉄分が多そうなイメージがありますが、あおのりの含有量は豚レバーの約6倍あります。
品名 | 含有量 (mg/100g) | 区分 |
---|---|---|
あおのり (乾) | 74.8 | 野菜 |
ひじき (乾) | 55.0 | 野菜 |
きくらげ (乾) | 35.2 | 野菜 |
豚レバー | 13.0 | 肉 |
パセリ | 7.5 | 野菜 |
鶏レバー | 9.0 | 肉 |
牛レバー | 4.0 | 肉 |
納豆 | 3.3 | 野菜 |
小松菜 | 2.8 | 野菜 |
ほうれん草 | 2.7 | 野菜 |
あゆ (焼) | 5.5 | 魚 |
しじみ | 5.3 | 魚 |
うなぎの肝 | 4.6 | 魚 |
いわし (丸干) | 4.4 | 魚 |
かつお | 1.9 | 魚 |
日本人男性と女性の年齢別の鉄分の一日推奨摂取量です。
年齢 | 男性 (mg/日) | 女性 (mg/日) |
---|---|---|
0〜5ヶ月 | 0.5 | 0.5 |
6〜11ヶ月 | 5.0 | 4.5 |
1〜2歳 | 4.0 | 4.5 |
3〜5歳 | 5.5 | 5.5 |
6〜7歳 | 6.5 | 6.5 |
8〜9歳 | 8.5 | 8.0 |
10〜11歳 | 10.0 | 9.5 |
12〜14歳 | 11.0 | 10.0 |
15〜17歳 | 9.5 | 8.5 |
18〜29歳 | 7.0 | 6.0 |
30〜49歳 | 7.5 | 6.5 |
50〜69歳 | 7.5 | 6.5 |
70歳以上 | 7.0 | 6.0 |
妊婦 (初期) | – | +2.0 |
妊婦 (中期・末期) | – | +9.5 |
授乳婦 | – | +2.5 |
実際に厚生労働省が推奨している1日の鉄分量を摂取するのは難しく、やはりサプリを栄養補助食として摂取するのはとても有効であるか考えられます。
第1章まとめ
- 女性特有の不調の根本原因の一つは鉄不足である。著者のクリニックに来る不調を抱える女性の約8割に血液検査で栄養不足、特に鉄不足が見られる。
- 現代の女性は、見た目では分からなくても、ビタミン、鉄、ミネラル、タンパク質などの必要な栄養素が不足し、栄養バランスが崩れていることがある。
- 栄養バランスを整えることで、多くの場合たった2週間で体調の変化を実感できる。
- 女性は月経による出血で鉄を失いやすいため、1ヶ月の鉄の吸収量よりも喪失量が多くなり、鉄不足に陥りやすい。平均的な月経による鉄の喪失量は約30mg相当である。
- 鉄不足はゆっくりと進行するため、だるさや頭痛などの症状に慣れてしまい、血液検査で指摘されるまで気づかないことが多い。
- 鉄は酸素を運ぶだけでなく、エネルギー産生にも不可欠であり、不足すると疲れやすくなる。
- 鉄は皮膚のコラーゲンやケラチンの生成にも関わるため、不足すると肌や髪のトラブルにつながる。
- 鉄は睡眠意欲や心の安定に必要な神経伝達物質の合成と伝達にも深く関与しており、不足するとメンタルの不調を引き起こす可能性がある。
- 鉄不足によって、息切れ、思考力の低下、肌の不調、疲労感、意欲の低下、睡眠の質の低下など、様々な健康・美容上の問題が生じる。これらの問題のほぼ全ては鉄不足が原因と言っても過言ではない。
- 意識的に鉄を摂取することで、心身ともに元気になり、人生が好転する可能性がある。
第2章まとめ
鉄活に欠かせない重要なポイントが紹介されています。単に鉄分を多く摂取するだけではなく、体が鉄分を効率的に吸収し利用するためのステップが強調されています。
ポイント1:胃腸の状態を整える
- 鉄だけをたくさん摂っても、体が消化吸収できなければ意味がないと指摘されています。
- 鉄不足の女性は栄養の偏りから胃腸の機能が低下しているケースが多いため、鉄を補う前に胃腸を整えることが非常に重要です。
- 腸内環境を良くするための五箇条として、プロバイオティクス(納豆、味噌、ヨーグルトなど発酵食品、オリゴ糖)を摂取すること、プレバイオティクス(食物繊維、海藻、きのこなど)を摂ること、糖質を控えめにして悪玉菌を増やさないこと、グルテンやカゼインをできるだけ避けること、よく噛んで食べること が挙げられています。
- ヨーグルトはカゼインがリーキーガットに関与する可能性があるため、豆乳ヨーグルトが推奨されています。
- 腸内環境が悪いと、悪玉菌が鉄を餌にして増殖し、せっかく摂取した鉄を奪ってしまう可能性があるとされています。吸収されなかった非ヘム鉄のサプリメントも悪玉菌を増やす可能性があるため注意が必要です。
- グルテンやカゼインはリーキーガット症候群を引き起こす可能性があり、腸の健康を考える上で避けた方が無難です。よく噛むことで胃酸や唾液の分泌が促され、鉄の吸収も高まります。
ポイント2:十分なエネルギーを摂取
- カロリー不足はタンパク質不足を招き、貧血などの様々な症状を引き起こすとされています。
- 摂取したタンパク質がエネルギー源として使われると筋肉が落ち、太りやすくなるため注意が必要です。
- 健康のためにもオリーブオイル、エゴマ油、亜麻仁油といった良質な油を摂ることが推奨されています。
- 特にMCTオイルは消化吸収に優れ、すぐにエネルギーになるため、糖質を控えている方や食欲のない方におすすめされています。無味無臭で使いやすく、サラダやスープに手軽に使えると紹介されています。
ポイント3:タンパク質は最も大事
- タンパク質は全ての組織や酵素において最も重要な栄養素であると強調されています。
- 運動量によって個人差はあるものの、体重1kgあたり1~1.5gの摂取が推奨されています(体重50kgの人なら50~75g)。
- SNSの情報を見てやみくもにプロテインを飲むと腸内環境が悪化する場合もあるため、消化できる範囲で摂ることが大切です。
- ボーンブロス(骨付き肉と野菜を煮込んだスープ)が紹介されています。骨からアミノ酸や鉄などの栄養が溶け出し、栄養満点で腸の粘膜修復にも役立つとされています。
ポイント4:飲酒の影響
- アルコールは肝臓で分解される過程で、鉄の吸収や代謝に重要なビタミンB1、ナイアシン、亜鉛を消費するとされています。
- 飲酒量が多いほどこれらの栄養素が消費され、体に必要な栄養素が不足しがちになるため、鉄不足を考えると飲酒との付き合い方を考える必要があると述べられています。適度なリラックス効果は期待できるものの、鉄不足を考慮すると注意が必要です。
第3章まとめ
鉄不足を改善するための具体的な食事と栄養素の摂り方が解説されています。
ヘム鉄を意識的に摂取しつつ、非ヘム鉄をビタミンCやクエン酸、タンパク質と組み合わせて摂ることで、効率的に鉄不足を改善できると解説されています。また、2週間の継続的な取り組みが重要であると強調されています。
鉄製のフライパンや鍋で調理することも鉄分摂取に有効であり、酸味のある食材(トマト、酢など)を使うと、より多くの鉄を引き出せると述べています。
鉄分はヘム鉄と非ヘム鉄の2種類
ヘム鉄
- ヘム鉄は肉や魚などに含まれ、吸収率が比較的高いのが特徴です。特にレバーは鉄分が豊富で、豚レバーには100g中13mg、鶏レバーには9mgの鉄が含まれています。
- レバーが苦手な人には赤身の肉を勧めています。赤身の肉の赤色はミトコンドリアの鉄を反映しており、鶏むね肉よりも牛ヒレ肉の方が鉄分が多いです。特に鹿、馬、イノシシなどのジビエ肉は赤みが強く、鉄分も豊富です。
- 魚も同様に、赤身のマグロやカツオなどに鉄が多く含まれています。血合いにはヘム鉄が豊富ですが、マグロなどの大型魚は水銀も多く含むため、食べ過ぎには注意が必要です。
非ヘム鉄
- 非ヘム鉄は大豆加工品や小松菜、ほうれん草などに多く含まれていますが、卵も非ヘム鉄の食品です。
- 非ヘム鉄は吸収率が2〜5%と低く、一緒に食べる食材によって吸収率が左右されやすいという特徴があります。お茶やコーヒーに含まれるタンニンは鉄の吸収を抑えるため、一緒に摂取しないように注意が必要です。
鉄の吸収をアップさせる食事の工夫
- 吸収率の低い非ヘム鉄でも、食べ合わせを工夫することで吸収率を上げることが可能です。
- ビタミンCは鉄の吸収を高める栄養素であり、オレンジ、キウイ、牡蠣などの果物に多く含まれるため、食事の際に一緒に摂るようにすると良いでしょう。ただし、果物は糖分が多いため、摂り過ぎには注意が必要です。パプリカやブロッコリーなどの野菜にもビタミンCは含まれますが水溶性のため、生で食べるなど調理法を工夫することが推奨されています。
- クエン酸も非ヘム鉄の吸収率を向上させる効果があります。クエン酸は疲労回復にも役立ち、酢、レモン、ゆず、すだち、梅干しなどに含まれるため、調理の際に意識して使うと良いでしょう。
- タンパク質も鉄の吸収を高めます。非ヘム鉄の食材は、肉や魚といったタンパク質も鉄分も多い食材と組み合わせてしっかり鉄を摂ることが重要だと述べています。
クエン酸とビタミンC
要するに、非ヘム鉄を効率よく摂取するためには、ビタミンCが豊富な果物や野菜、クエン酸が豊富な調味料や食品を食事に取り入れることが重要です。特に、ビタミンCは加熱によって失われやすいため、調理法を工夫する必要があります。
ビタミンC
- ビタミンCは鉄の吸収をアップさせる栄養素の一つです。特に、吸収率の低い非ヘム鉄の吸収を高める効果があります。
- ビタミンCはオレンジ、キウイ、牡蠣などの果物に多く含まれているため、食事の際に一緒に摂ることで鉄の吸収率アップにつながるとされています。ただし、果物の摂り過ぎによる糖分の過剰摂取には注意が必要です。
- パプリカやブロッコリーなどの野菜にもビタミンCは含まれていますが、水溶性であるため、茹でたり加熱したりすると失われやすいです。そのため、サラダにするなど生で食べるなどの調理工夫が良いとされています。
クエン酸
- クエン酸も非ヘム鉄の吸収率をアップしてくれる栄養素です。
- クエン酸は疲労回復にも役立ち、酢やレモン、ゆず、すだち、梅干しなどに含まれています。そのため、調理の際に意識して使うことが推奨されています。
サプリを摂取する場合の注意点
- 吸収率向上のコツ
- 非ヘム鉄・キレート鉄は、ビタミンCと一緒に摂取すると吸収率が上がります。
- コーヒー・紅茶(タンニン)やカルシウムと同時摂取は吸収を阻害します。
- 副作用のリスク
- 非ヘム鉄は胃痛・便秘を起こしやすいですが、キレート鉄やヘム鉄は比較的安心です。
- 価格の目安
- ヘム鉄サプリ:1ヶ月分2,000~4,000円
- キレート鉄:1ヶ月分1,500~3,000円
- 非ヘム鉄:1ヶ月分500~1,500円
- 医療用との違い
- 病院で処方される鉄剤の多くは非ヘム鉄(硫酸鉄)です。吸収率は低いですが、確実に大量摂取できます
個人的メモ
第1章では、女性特有の不調と鉄不足の関係について説明しています。
- 多くの不調を抱える女性の約8割に血液検査で栄養不足、特に鉄不足が見られることが指摘されています。
- 女性は月経によって鉄を失いやすく、1ヶ月あたりの吸収量よりも喪失量が多くなるため、鉄不足に陥りやすいとされています。
- 鉄は酸素を運ぶだけでなく、エネルギー産生、コラーゲンやケラチンの生成、神経伝達物質の合成にも関わっており、不足すると疲れやすい、肌や髪のトラブル、メンタル不調などを引き起こす可能性があります。
第2章では、鉄活に欠かせないポイントを紹介しています。
- 胃腸の状態を整えることが重要であり、腸内環境を良くするための五箇条(プロバイオティクス、プレバイオティクス、糖質控えめな食事、グルテン・カゼインを避ける、よく噛むこと)が挙げられています。
- 十分なエネルギーと良質な油(特にMCTオイル)を摂取することも大切です。
- タンパク質は最も重要な栄養素であり、推奨摂取量やボーンブロス(骨付き肉と野菜の煮込みスープ)のすすめが紹介されています。
- 飲酒は鉄の吸収や代謝に必要なビタミンB1や亜鉛を消費するため、付き合い方を考える必要があるとされています。
第3章では、2週間で鉄不足の症状を改善するための具体的な方法を解説しています。
- 鉄には吸収率の高いヘム鉄(肉、魚、レバー、ジビエなど)と吸収率の低い非ヘム鉄(大豆加工品、小松菜、ほうれん草、卵など)があることが説明されています。
- 鉄鍋での調理や、酸味のある食材(トマト、酢)の使用が非ヘム鉄の吸収を高める可能性があるとされています。
- お茶やコーヒーに含まれるタンニンは鉄の吸収を阻害するため、摂取を避けるべきとされています。
- 非ヘム鉄の吸収をアップさせる栄養素として、ビタミンC、クエン酸、タンパク質が挙げられており、これらの栄養素を多く含む食品との組み合わせが推奨されています。
最後に、まずは2週間鉄活を実践することで、不調が緩和され、人生が好転する可能性があると締めくくられています。
レビュー

すべてに当てはまる!
これまでずっと付き合っていくしかないと諦めていた身体の不調がすべて当てはまり、私のことだ!と思いながらぐんぐん読み進めることができました。
重要なポイントは黄色マーカーがされているので、成分の名称が正確に覚えられなくても理解しやすい本です。
薬剤アレルギーも多く(リドカインなど)歯医者での麻酔にも反応し、シャンプーや化粧品を選ぶ際もパラベンが入っているものを避けてきました。
とにかくすべて身体に触れる物は成分表をじっくり眺めて断念することが多かった人生を送ってきた私にとって、腸から治していくという発想はとても合っていると思います。
年齢のせいとか、体質なんだ、、と諦める前に、この本に出会って、親身になってくれる先生に出会えてよかったです。
原因不明の不調に悩まされ、病院に行っても「ストレスですね」と言われ続けてきた多くの女性の方に読んでほしい本です。
まずは2週間、食べ物の記録をつけながら、ストレスフリーの人生を送るための努力を続けます。

起立性調節障害 が治りました
小児科で 起立性調節障害 と診断された中学生の我が子を治療していただいた先生です。
初めて受診したとき、「治してあげるよ!」と、とても心強い言葉をくださいました。
『2週間で改善』 とは大げさではないか、と思われるかもしれません。
けれど、実際、我が子は2週間で変化が現れました!
あっという間に回復し、1年近く続いたしんどさが信じられないほどになくなりました。
これからも栄養療法は続けていきます。

完全に他人事でした!!!
鉄不足は女性や貧血のあるかたが中心だと思い込んでいました。
鉄を中心に他の栄養素のことを上辺でした知らなかった自分が恥ずかしい。
いや、知識を深めることができ大変うれしいです。
医療従事者ですが、一般の方や女性のみならず、医療従事者も知るべき内容です。
所詮、何事においても原因となる本筋をが分かり、大変勉強になった一冊です。分かりやすい、内容なのでぜひおすすめします。ちなみに知人の管理栄養士さんにも勧めました。
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