門前仲町の駅からわずか1分、そこは日常を非日常へと転じる結界。梵字が刻まれた壁に守られ、一歩入れば魂を揺さぶる祈りの炎が燃え盛る。江戸の昔から庶民の願いを一身に受け止めてきた「深川のお不動様」。太鼓の音が心臓に響き、読経の声が迷いを洗い流す。ここはただ拝む場所ではない。内に秘めた情熱の炎を再燃させ、明日への一歩を踏み出す力を授かる、魂のチャージスポットなのだ。さあ、あなたもその炎に触れてみないか。
ご本尊
深川不動堂のご本尊は、不動明王です。
大本山である成田山新勝寺のご本尊を勧請した御分身であり、古くから「深川のお不動様」として篤い信仰を集めています。そのお姿は、如何なる障りも断ち切る智慧の剣と、迷える衆生を救い上げる羂索(けんさく)を手にし、燃え盛る迦楼羅炎(かるらえん)を背負い、盤石な岩の上に座しておられます。これは、動かざる決意をもって人々を救済するという、強い意志の表れなのです。
属性
火
当寺院の属性を解き明かす鍵は、その信仰の中心にある二つの要素にございます。一つはご本尊である不動明王。不動明王は五大明王の中央に座し、宇宙の真理そのものである大日如来の化身とされます。この観点からは、万物を内包する「空⛅️」の属性とも捉えることができます。
しかし、深川不動堂の真髄を最も色濃く表しているのは、毎日厳修される護摩祈祷に他なりません。護摩の智慧の炎は、我々の煩悩という薪を燃やし尽くし、願いを清らかな形で仏に届けるためのもの。この燃え盛る炎は、まさしく「火🔥」の属性そのものであり、変革、情熱、そして厄を祓う強力な力を象徴しています。
一部では「地」属性とされる説も見受けられますが、その根拠は明確ではございません。当寺院の持つエネルギーの根源、そして参拝者が最も強く体感する力は、疑いようもなく護摩の炎にあります。故に、ここを「火🔥」の霊場と断ずるのが、最も本質を捉えた見方でありましょう。
ご真言
ご本尊である不動明王の「ご真言」となります。ご真言とは、仏の悟りの境地を短い言葉で表したもので、唱えることで仏と一体となり、そのお力をいただくことができるとされています。
- 不動明王慈救咒(ふどうみょうおうじきゅうのじゅ)
- のうまく さんまんだ ばざらだん せんだ まかろしゃだ そわたや うん たらた かんまん
- 不動明王火界呪(ふどうみょうおうかかいじゅ)
- のうまく さーらばたたーぎゃてーびゃく さーらばもっけーびゃく さーらばたーたらたー せんだーまかろしゃなーきゃんなーぎゃく さーらばびきんなん うんたらたーかんまん
特に護摩祈祷の際には、これらのご真言が力強く唱えられます。
ご本尊以外に安置されている像
深川不動堂の境内には、ご本尊の不動明王の他にも、数多くの尊い仏様が祀られております。
- 四大明王(よんだいみょうおう): 本堂にてご本尊不動明王の脇を固めておられます。(江東区指定文化財)
- おねがい不動尊: 旧本堂に安置されている、樹齢500年を超える楠から彫り出された国内最大級の木造不動尊像です。縁日と日曜祝日には、直接お体に触れてお参りすることができます。
- みまもり不動尊: 内仏殿2階に安置。金色に輝くお姿から、かつては「金色不動」と呼ばれていました。
- 大日如来: 内仏殿4階の宝蔵大日堂にご本尊として安置されています。天井には中島千波画伯による壮大な「大日如来蓮池図」が描かれています。
- 深川龍神: 水を司る神として古くから信仰されており、願い事を書いた札を水に溶かして祈願します。
- 開運出世稲荷: 成田山の出世稲荷(荼枳尼天)を勧請したお稲荷様です。
開山・開基
- 開創: 元禄16年(1703年)
山号・宗旨・宗派
- 山号: 成田山
- 宗旨・宗派: 真言宗智山派
- 寺格: 大本山成田山新勝寺 東京別院
歴史
- 元禄16年(1703年): 成田山新勝寺のご本尊が江戸で初めて出開帳されたことに始まります。当時、歌舞伎役者の市川團十郎が不動尊信仰に篤く、その人気も相まって江戸庶民の間に不動尊信仰が爆発的に広まりました。
- 明治2年(1869年): 神仏分離令により、当時境内地を共有していた富岡八幡宮の別当寺であった永代寺が廃寺となります。
- 明治11年(1878年): 現在地に本堂の建設が始まり、明治14年(1881年)に完成、「深川不動堂」として独立しました。
- 昭和20年(1945年): 東京大空襲により本堂を焼失。しかし、ご本尊は無事に運び出され、難を逃れました。
- 昭和26年(1951年): 千葉県印西市の龍腹寺の本堂を移築し、旧本堂として再建されました。
- 平成24年(2012年): 開創310年を記念し、現在の新本堂が落慶しました。
ご由緒
江戸時代元禄期、幕府の政策により庶民の寺社参詣が厳しく制限されていた時代、人々は成田山新勝寺のお不動様を江戸で拝みたいと強く願いました。その熱意に応え、元禄16年(1703年)、富岡八幡宮の別当寺であった永代寺の境内にて、初めてのご本尊の出開帳が許されました。これが深川不動堂の始まりです。「深川のお不動様」として親しまれ、以来300年以上にわたり、江戸・東京の庶民の祈りを受け止め続けています。
伝説
深川不動堂の隆盛は、初代市川團十郎の不動尊への篤い信仰と切っても切り離せません。子宝に恵まれなかった團十郎が成田山に祈願したところ、待望の長男を授かりました。團十郎は「不動利益」に感謝し、不動明王が登場する歌舞伎「雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)」を創作・上演。これが大評判となり、江戸中の人々が不動尊の霊験を知るところとなったのです。この「成田屋」の屋号と不動尊信仰の結びつきは、現代に至るまで脈々と受け継がれています。
ご利益
不動明王は、あらゆる障害を打ち砕き、人々を救済する強力な力を持つ仏様です。そのため、ご利益は多岐にわたります。
- 厄除け・災難除け
- 心願成就
- 商売繁盛
- 家内安全
- 交通安全
- 病気平癒
- 合格祈願
特に、護摩祈祷によってそのお力を強くいただくことができるとされています。
境内の見どころ
- 真言梵字壁(しんごんぼんじかべ): 新本堂の外壁を覆う、圧巻の梵字の壁。不動明王のご真言が一面に書かれており、この空間自体が強力な結界となっています。
- 旧本堂: 東京大空襲の戦火を免れた千葉の寺院を移築した、江東区最古級の木造建築。堂内に鎮座する「おねがい不動尊」の迫力は必見です。
- 内仏殿・祈りの回廊: 1階から4階まで、様々な仏様にお会いできる祈りの空間。特に2階の「四国八十八ヶ所巡拝所」では、各霊場の砂が納められており、東京にいながらお砂踏みができます。そして、約1万体のクリスタル五輪塔が幻想的に輝く「祈りの回廊」は、息をのむほどの美しさです。
- 宝蔵大日堂: 内仏殿4階にある、黄金に輝く大日如来像と、日本画家・中島千波氏が描いた日本最大級の天井画「大日如来蓮池図」は、まさに荘厳の一言に尽きます。
- 深川龍神: 願い事を書いた札を水鉢に浮かべると、札が溶けて龍神様に願いが届くといわれるパワースポットです。
参拝の注意点
- 護摩祈祷中の撮影は厳禁です。 祈りの妨げとならないよう、静粛にお参りください。
- 本堂内は土足厳禁です。入口で靴を脱ぎ、備え付けの袋に入れてお持ちください。
- 堂内では帽子の着用はご遠慮ください。
文化財
- 木造不動明王及二童子像・木造四大明王像: 江東区指定有形文化財(彫刻)
関係のある有名人
- 市川團十郎家(成田屋): 江戸時代、初代市川團十郎が不動尊信仰を江戸に広めて以来、代々の團十郎丈が篤く信仰を寄せています。
護摩祈祷の時間
護摩祈祷は毎日厳修されています。誰でも無料で堂内に上がって参列することができます。
- 毎日: 9時、11時、13時、15時、17時
- 縁日(毎月1日、15日、28日): 上記に加え、19時の回も執行されます。
- 時間は約30分間です。
- ソース: 成田山東京別院深川不動堂 公式サイト
最寄り駅と徒歩時間
- 東京メトロ東西線 「門前仲町」駅 1番出口より 徒歩1分
- 都営地下鉄大江戸線 「門前仲町」駅 6番出口より 徒歩2分
アクセス
| 名称 | 成田山深川不動堂(新勝寺東京別院) |
| 読み方 | なりたさんふかがわふどうどう(しんしょうじとうきょうべついん) |
| 通称 | 深川のお不動様 |
| 参拝時間 | 参拝/8:00〜18:00 お守り授与: 9:00~18:00(縁日は20:00まで) 護摩受付: 9:00~17:45(縁日は19:45まで) 内仏殿参拝[4階]/9:00~17:00 内仏殿参拝[1階][2階]/9:00~17:45 |
| トイレ | 授与所の左側 |
| 御朱印 | あり |
| 限定御朱印 | あり |
| 御朱印帳 | あり |
| 電話番号 | 03-3641-8287 |
| ホームページ | https://fukagawafudou.gr.jp/ |
| 住所 | 東京都江東区富岡1-17-13 |
| 最寄り駅 | 東京メトロ東西線 「門前仲町」駅 1番出口より 徒歩1分 都営地下鉄大江戸線 「門前仲町」駅 6番出口より 徒歩2分 |
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近くの神社仏閣
- 富岡八幡宮: 徒歩約2分 (約150m) – 「深川の八幡様」と親しまれる江戸最大の八幡宮。
- 永代寺: 徒歩約3分 (約250m) – かつて富岡八幡宮の別当寺であった寺院。
- 心行寺: 徒歩約5分 (約400m) – 深川七福神の福禄寿が祀られています。
- 陽岳寺: 徒歩約4分 (約350m) – 江戸十祖師の一つ、日覚上人ゆかりの寺院。
- 法乗院 (深川えんま堂): 徒歩約5分 (約400m) – 日本最大の閻魔大王座像で知られています。
近くの食事処
- みかわ 是山居 (みかわ ぜざんきょ): 天ぷらの巨匠、早乙女哲哉氏が揚げる至高の天ぷらを堪能できる名店。芸術の域に達した一品は、まさに至福の味わいです。
- 焼肉 静龍苑 (せいりゅうえん): 予約困難なことでも知られる焼肉の聖地。特にタン塩は絶品と名高く、一度は味わいたい逸品です。
- こうかいぼう: 魚介系の優しいスープが心と体に染み渡る、人気のラーメン店。丁寧な仕事が光る一杯は、参拝後の空腹を優しく満たしてくれます。
- とんかつ 丸七 本店: 蓋が閉まらないほどのボリュームで話題の「焼きカツ丼」が名物。甘辛いタレととろとろの卵、分厚いカツの組み合わせは、まさに至福です。
- 双麺 門前仲町店 (そうめん): 濃厚な魚介豚骨スープが特徴のつけ麺・ラーメン店。もちもちの太麺とスープの相性は抜群で、満足度の高い一杯です。
参考



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